新型コロナ「7段階モデル」で今冬の流行を予測 高橋泰教授「98%は風邪、血管が弱いと要注意」

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――感染7段階モデルのVersion2へ部分的改修を行ったそうですが、モデル自体に変更があるのですか。

基本は変わらない。風邪は、上気道の粘膜でウイルスの感染、増殖が始まると、人体の中で警察官にあたるマクロファージやCTLといった自然免疫や細胞性免疫、微量抗体が戦いを始める。この間、無症状の場合もあれば、発熱や炎症などの症状があらわれることもある。新型コロナウイルスも風邪同様の弱毒ウイルスであり、日本の場合、暴露した人のうち約98%は無症状かこのような自然免疫で対処でき、風邪様の症状で終わる(ステージ1~2)。

自然免疫の防御網をすり抜けた2%程度において、新型コロナウイルスが静かに増殖し、やや症状が重くなり、肺炎や消化器症状など全身症状が現われる人も出てくる。この段階で免疫系の細胞は「獲得免疫」の立ち上がりを促すサイトカインという物質を出して、ようやく抗体が出現する。抗体が出現すると、日本の場合98%以上で新型コロナが殲滅され、感染ストーリーが収束する(ステージ3~4)。

サイトカインの量が適切であれば回復に向かうが、1万件に対し4件以下という低い確率だが、過剰に反応してサイトカインを出しすぎる場合がある。これがサイトカインストームという現象であり、この現象が出現すると、重症化してしまう。ミサイルに例えると、6発、20発で敵を殲滅できるのに、100発出して自分の細胞まで傷つけるというイメージだ。

血管が傷んでいると重症化しやすい

サイトカインストームを引き起こすステージ5では全身で微小血栓が発生する。特に、ヘビースモーカー、糖尿病、高血圧、抗がん剤治療後などで血管がひどく傷んでいる人にサイトカインストームが発生した場合、死に至る可能性が高い。高齢者の重症化率、死亡率が高いのは、血管が傷んでおり血栓ができやすい人が多いためだと考えられる。重症化するのは、59歳まででは暴露した人が100万人いたとして1~6人、60歳以上では100万人に31人、70歳以上では暴露100万人に対して59人だ。

さらに死に至る(ステージ6)ような重症例では血栓のみならず、かなりの出血が高頻度で観察される。死に至る例は29歳まではゼロで、30~59歳では暴露100万人に対して1人、60~69歳では10人、70歳以上では44人というシミュレーション結果だ。これらの数字は以前の推計と変わらない。

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