「武漢日記」が刻む「ちゃんと怒る」行為の重み

「しつこく覚えておく」ことがいちばん重要だ

今年1月から4月まで実施された中国・武漢の都市封鎖は世界に大きな衝撃を与えた(写真:Featurechin/アフロ)
いまだ世界で猛威をふるうコロナ禍を最初に体験した中国・武漢から、女性作家・方方(ファンファン)が発信し続けた60日間の記録『武漢日記』は、日本でも発売以降、大きな反響を呼んでいます。
『武漢日記』の訳者の1人である飯塚容さんと、著者のストロングスタイルにたくましさを感じた、と言うライターの武田砂鉄さんが、コロナ禍における政府の対応や日本人の災厄への向き合い方、いま多くの日記文学が生まれている理由まで、縦横無尽に語り合いました。「武漢を蔑む日本人は『中国人の本質』を知らない」(2020年11月10日配信)に続く後編をお届けします。

愛国心が「愛国心」に叩かれる

武田砂鉄(以下、武田):この本を読むと、「愛国心」という軸足を感じます。この国をどうしたらいいのか、どういうことを考えていけばいいのか、そして、誰に対して異議申し立てすればよいのか。国のことを愛しているがゆえに問題視する姿勢が、カギカッコつきの強固な「愛国心」に叩かれるというのは、日本でも、アメリカでも、そして中国でも、世界で共通することなんですね。

飯塚容(以下、飯塚):そういう世の中になってしまっていますね。SNSが発達したおかげで、方方さんはこうやって発信することができて、日本にいるわれわれもリアルタイムで読めたわけです。それはすばらしいことなんですが、逆に批判する人たちもたくさん出てきて、どんどん叩かれて、集中攻撃に遭う。これは痛し痒しというか、裏腹のことなんでしょうね。

武田:3月10日の日記に、方方さんが雑誌『騒客文芸』からのインタビューにメールで回答したものが転載されています。その中でインタビュアーが、メディアを信じるよりも、方方さんの日記に注目したほうがいい、などと言いながら、方方さんを機嫌よくするような質問をすると、方方さんは「メディアを信用しないというのも、あまりに偏った考え方ではないでしょうか」と返しています。

方方さんはさまざまな言説を読み解いているのでしょうが、おべんちゃらしかやらないジャーナリストもたくさんいるのでしょう。国民のメディアとの付き合い方は千差万別なのでしょうが、どのように付き合っている人が多いんでしょうか?

飯塚:政府系の巨大メディアがたくさんあります。方方さんは、別の日の「日記」では激しいメディア批判をしています。そういうメディアは「プラスのエネルギー」の情報しか流さないわけで、そうした点を強く批判しているんです。

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