武田:日本であれば、「女性」であることが持ち出されて叩かれたと思います。今年、ツイッターのハッシュタグで広がった「#検察庁法改正案に抗議します」でも、日本の若い女性アーティストがそれを発信すると、中年の政治評論家が「歌手やってて、知らないかもしれないけど……」などとマウンティングをした、なんてことがありました。まったくない、とは驚きです。
飯塚:それが当たり前のことなんでしょうね。
武田:この本って、書店店頭に数多く置かれている嫌中本を手にしている人も買っているのではないかと思います。どうせとんでもないことが起きたんだろ、という先入観を充足したい気持ちで。でも、読むと、出鼻をくじかれますね。上げた拳をどこに向ければいいんだ、という感じになる可能性はなきにしもあらずですね。
飯塚:そうした嫌中本のひとつとして受け止められることも覚悟はしていました。ただ、実際はそういう内容ではありませんよね。私は大学で中国の作品や資料を学生たちに読んでもらって、感想を聞くことが多いんですが、そのなかで、「中国って本当にひどい国なんですね、私は日本に生まれて本当によかった」といった反応がくると本当にがっかりします。
中国でも日本と同じ感覚で人が生きている
日本でも中国でも人が生きている以上、そこには悲しいこともあれば楽しいこともある、同じ感覚で生きている、そこをちゃんと見てもらいたい。また、中国で起こっていることは日本でも起こりうる、すでに起こっているかもしれないということを常に頭の片隅においてほしいですね。対岸の火事を見るように、自分は高みにたって、安心できれいで幸せな暮らしをしている、というふうに考えないでほしい、と強く思います。この本についても、やはり同じことを望んでいます。
武田:よし悪しありますが、中国は、対応するとなったら国が一丸となって動く。日本では、例えば、新型コロナウイルス接触確認アプリを作ってはみたものの、皆がアプリを入れてくれるわけではない。明らかなる第2波のときに、政府の中枢に「第2波ですか?」と聞いても、「いやぁ、第2波とは言えない」と言い、これだけ長引くと飲食店もやっていけないと申し出ても、「いやぁ、でもこないだ助成金・補助金は出したし」と、とにかくすべてがあいまいです。強大な力を求めているわけではないですが、まずは政府が方針を出せよ、と感じることが多々ありました。