「今どきFAX?」と怒る人と一緒に考えたい問題 役所や病院がメール対応に消極的なのは不毛だ

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実際に重要なのは、日常的な問い合わせや連絡です。デジタル化が進んでいないことの問題の大部分は、ここにあるのではないでしょうか?

ですから、デジタル化の第1歩として、正式な書類でない日常の連絡について、役所と病院が、メールと写真添付ファイルを送受信することを義務づけてほしいのです。それだけで、日常生活が格段に楽になるでしょう。

なお、正式申請のデジタル化には、別の問題もあります。それを進めるためには電子署名が必要であり、マイナンバーカードの普及が不可欠であることです。

これは、中央集権的な電子証明の仕組みなので、国民管理に使われる可能性が、ないとはいえません。

学校連絡のデジタル化は、話し合いでできること

学校と保護者の連絡は、紙からメールなどにし、ハンコは省略する。通知や保護者へのアンケートは、二次元バーコードをスマートフォンで読み取って回答する。欠席や遅刻の連絡は、電話ではなく専用フォームで行う。文部科学省は、10月20日、全国の教育委員会や都道府県に、こうした内容の通知を出しました。

これにより、保護者の負担を減らし、教員の業務効率化を図ろうというのです。

そして、これは、政府が進めるデジタル化の一環だというのです。

私は、この報道を見て、「だいぶずれているな」と感じました。

これは、学校と保護者の話し合いで決めればいいことではないでしょうか?そしてこれまでどおり電話や紙がよいということになれば、それでよいと思います。

メールや2次元バーコードを用いよと、文部科学省が口出しをすることではないでしょう。

これまで、紙でなければいけないとか、押印しなければいけないと規制をしていたのだとしたら、その規制がおかしいだけのことです。それをやめれば済むことです。

ここで問題にしたのは、こうしたこととは違います。

相手は役所や病院という組織であり、私たちが話し合いをする相手にはなってくれないところなのです。

そうした相手に連絡方法を変えてもらうには、政府の後押しが必要です。

こうしたことのためにこそ、政府が動いてほしいのです。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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