ザックの戦術は「攻撃」でも通用するのか? ”公式暗記型”指導で点を取れるのか

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そんなに都合よく、相手は動くのか?

合宿3日目のことだ。この日初めて、冒頭から攻撃の戦術練習が行われた。それまでは守備練習をメインテーマにしていたが、次のプロセスに移行したのである。

あくまで公開された冒頭15分を見たにすぎないが、攻撃の練習に関しては何かワクワクしない。守備の“公式”が手を打って感嘆するほどの説得力があったのに対して、攻撃はあまり役に立たなそうなルールが多い気がした。ザックは敵の動きを仮定して話を進めていたが、「そんなに都合よく、相手は動く?」という疑問を抱いてしまった。

たとえば、サイドで数的優位を生み出す攻撃の練習。

左センターバックの今野泰幸がボールを持ったとしよう。斜め前には左サイドハーフの香川と左サイドバックの酒井高徳が立っている。

仮想の敵としてザックが敵の右MF、イタリア人コーチが右サイドバックになる。

ザックはこう指示した。

「もし相手の右MF(すなわちザック)が今野にアプローチしてこなかったら、真司と高徳はそれぞれマークされた状態になる。だから今野にはボールを前に持ち出して、相手の右MFを引っ張り出してほしい。そうすれば真司と高徳のところで2対1の状況を作れる。センターバックがいかに目の前の相手を引っ張り出せるかだ」

ザックの想定の下では理にかなっているが、もし敵のFWが守備に加わってきたら、前提条件が崩れてしまうのではないだろうか。ザックの攻撃戦術は「誰々が相手を引きつけて、ほかの場所で数的優位を作る」といったものが多いが、近年はどのチームもコンパクトに守るように訓練されており、以前のように単純なマークの足し算・引き算が成り立ちづらくなっている。

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