ザックの戦術は「攻撃」でも通用するのか?

”公式暗記型”指導で点を取れるのか

(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

合宿は4年間の総復習

大きな可能性を感じさせるスタートだった。

5月21日、鹿児島県指宿市でブラジルW杯に向けた日本代表の合宿が始まった。ザッケローニ監督はその最初のメニューにおいて、いきなり守備の戦術練習を行った。

一発目の練習が雰囲気を盛り上げるようなレクリエーションメニューではなく、いきなり戦術練習を用意したところに、“基本からやり直してもらう”というザックの覚悟が感じられた。

ザックはとことん“公式”を暗記させることで、チームにオートマティズムを植え付けようとする指揮官である。指宿合宿は、まさにこの4年間に教えたことの総復習になった。

「いちばんやられたくないのは、中央にボールを通されることだ」

守備で最も大切な基本ルールを説明すると、ザックはそれを実行するためのエッセンスを次々にレクチャーし始めた。以下ザック理論を、実際にピッチで口にした語録とともに解説したい。

「チームメートとかぶらないようにポジションを取ろう」

解説守備者が相手ボールホルダーを見たとき、もし味方の背後に隠れてしまっていたら、その守備者のポジショニングは効果的ではない。相手がパスを通せるすき間が大きくなるからだ。相手ボールホルダーがゴールを向いたときに、たくさんの守備者の顔が見えている状態が望ましい。ザックはボールホルダーの後ろに立って、どれくらいかぶらないで立っているかをチェックし、「(山口)蛍はもう50センチ右」と細かく指示を出していた。

「外に蹴るフリをして、中にパスを出す選手がいるから、そういうキックフェイントに惑わされないように。ボールが動いてから動こう」

解説守備において予測はとても大事で、相手が目線を下に向けた瞬間に、キックの方向を予測して動けば、パスをカットする確率が高まる。だが、読みが外れたら組織に穴が開いてしまう。ザックはそういうリスクを好まないのだろう。たとえ相手が予測を超える動きをしても、それに対応できるように組織を作っている。

次ページ守備理論の完成度は極めて高い
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