敏腕TVディレクターが「相撲映画」に挑んだ理由 音と映像にこだわったドキュメンタリーが誕生

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――確かに「マツコの知らない世界」は、マツコさんの好き嫌いをごまかさずに、マツコさんのリアクションを真っ正面から追っているところがあります。

細木数子さんの番組もドキュメンタリーなんです。ゲストが怒られるんですけど、視聴者は細木数子さんがいつキレるのかな、大丈夫かなと思いながら見ていく。タッキーとくりぃむしちゅーも怒られた人たちを、大丈夫? と見ている。これもドキュメンタリーなんですよ。

まったくそういうふうに見せていませんが、そういうふうに作っているんです。だから無理にBGMとかで盛り上げる必要はなくて、中身をちゃんと構成立てて、面白く作れば見られる。もちろんBGMが必要なときにはつけたりもしますけどね。

海外で勝負したい

――結果としてお金は相当かかりましたが、それこそ海外セールスも期待できる出来となったのではないでしょうか。

もちろん。海外で勝負したいですね。相撲ファンはもちろんですが、ファンじゃない人をいかに相撲ファンにさせるかというのは、自分の中でのミッションでしたからね。

坂田栄治/さかたえいじ 1975年4月3日生まれ。埼玉県出身。東京農業大学卒業後、TBSへ入社し制作部へ配属。総合演出として手掛けた「ズバリ言うわよ!」をヒット番組へ導く。その後編成部へ異動し「マツコの知らない世界」を立ち上げる。再び、制作部へ戻り、総合演出として同番組を担当。2020年の現在は制作を離れ、メディアビジネス局メディア事業部勤務。過去の主な担当番組は「ズバリ言うわよ!」、「マツコの知らない世界」など (筆者撮影)

――番付表の説明なども、すごくわかりやすい説明でした。

相撲を知らない人にとっては、番付表もわかりづらいところもあると思うので、ピラミッド状にして説明してみました。よく海外のドキュメンタリーなどを見ていると、映像的にもけっこう遊びたい放題にやっているじゃないですか。そういうところは意識しました。

――確かに海外のドキュメンタリーには遊びの要素は多いですね。

日本のドキュメンタリーは、不正を暴いたり、苦しんでいる真実を描き出す作品とかそういうものばかり。そっちだけにドキュメンタリーを使うのは違う気がしています。今回の映画でやりたかったことは、現実にあることをわかりやすく楽しく伝えたいということだったんです。

――映画を作ってみて、映画の面白さを感じたところはありますか。

大画面と音の迫力は圧倒的ですね。それはテレビとはまったく違います。ただまた相撲を撮れと言われたら、「いやそれはちょっと大変かな」と思いますが(笑)。でも映像を作る技術で、違うことにチャレンジはしていきたいなと思いますね。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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