日本開国 渡辺惣樹著
ペリーの黒船が開国を迫ったのは日本近海に展開していた捕鯨船の補給、安全確保のためだった、というのが定説である。だがそれは刺身のほんのツマで、かの国の狙いはもっと大きかった。
中西部確保から太平洋へとフロンティアを求め始めていた時代、アジア東端に位置する日本をいかにして開国させアジア市場への足場とするか。防戦する先陣オランダ、虎視眈々と狙う英仏露。かくして戦略国家アメリカの深謀遠慮、虚々実々が幕を開ける。
日本、中国、アメリカと舞台はめまぐるしく回り、登場人物も多彩で個性的だ。原資料を丹念に渉猟する中で選び出されたエピソードの数々が、モザイクのようにはまってくる仕掛けは面白く、19世紀の世界と幕末日本を当時の雰囲気を伝えながら、素朴な筆致で活写される。
ハリスのような凡庸な外交官が下田に来た理由も、アメリカの対日・対中関係の原点をめぐる示唆も、推理小説の終幕にも似て興趣十分である。(純)
草思社 1890円
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