これから資本主義はどう変わるのか 17人の賢人が語る新たな文明のビジョン 五井平和財団編 ~「市場の失敗」の対処に政府規制以外の道を模索
世界金融危機は、資本主義制度の意味を問う絶好の機会を与えてくれた。資本主義批判の本はあふれるほど出版されている。混乱が収まりつつある現在、改めて冷静に状況を見つめ直してみる必要があるだろう。
経済が繰り返し経験してきたのは「市場の失敗」と「政府の失敗」ではなかったか。今、直面しているのは「市場の失敗」である。ニューディール政策や社会主義は「市場の失敗」に対する一つの答えであった。しかし、それも「政府の失敗」を招き、再び市場主義を蘇らせた。そして、また「市場の失敗」に直面しているのである。
“自由市場”は時に機能不全に陥り、さまざまなモラルハザードを引き起こすだけでなく、気候変動や世界的な貧富の格差という現代的な問題を解決できないことも明らかになった。この失敗をどう克服すればいいか。政府による市場の規制以外の道はないのだろうか。本書はそうした可能性を模索している。
本書は、現場で活動する経済主体が自らを変革する必要性で、と説く。寄稿者17人の一人ビル・ゲイツは、長期的にみれば世界は確実に進歩しており、「だれもがそれぞれの役割を果たせば、世界は着実によくなる」と指摘している。ただ素朴な楽観論だけでは世界は救われない。では、人々はどう役割を果たすべきなのか。それが二つ目のテーマである。
「市場の失敗」に対処するためには「社会起業家」が必要だと説くのが第10章の寄稿者だ。他の多くの章でも、いかに世界各地で「社会起業家」が誕生し、活躍しているかについて興味深く報告している。
多数の筆者の執筆本の宿命で、それぞれの論に物足りなさは残るが、最前線で活躍している人の示唆だけに、大いに参考になりそうだ。
ごいへいわざいだん
宗教学者、詩人・作家の故五井昌久氏の提唱した世界平和運動を継承、推進。国連NGOのワールド・プレイヤー・ソサイティと密接。
英治出版 1995円 301ページ
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