プリンスホテルが「引き算のホテル」に託す使命 デジタル世代と既存ブランドの架け橋となるか
宿泊特化型のノウハウを持たないプリンスホテルにとっては、ゼロからの立ち上げだ。20代、30代の若手社員約15人を中心としながら、ブランドやシステム開発など、さまざまな部門の人員が関わった。宿泊特化型のホテルからヘッドハンティングした人材も開発に加わっている。
まずは先行するライバルの徹底した研究だ。ターゲットをどう設定し、既存ブランドとどう切り分けているのか。立地はどうか、最大何人まで泊まれるのか、どんなサービスを提供しているのか。宿泊特化型は激戦市場。他社の動向を踏まえつつ、独自性を打ち出す必要があった。
若手社員の声が顧客ニーズに直結
未経験の分野であっても、若手社員は臆することなく走り回った。指示せずともさまざまなホテルを研究して回り、スタッフとも気軽に話して情報を得てきたのだ。スマートインでアプリ予約(電話予約なし)、スマホキーなど、スマホをフル活用するサービスを採用できたのは、若手社員の声が大きい。
「サービスとして、これでは足りないのではないか?と思うところがあっても、ターゲット層そのものである若手社員が『いらない』と言えば、経営もその意見を顧客ニーズとして捉える必要がある」(PSI事業部長の前田朋子氏)
たとえば朝食。スマートインは全プランが朝食付きでテイクアウトも可能だが、メニューはホットサンド、フルーツサンドに加えてコーヒーなどの飲み物。和食は提供していない。フルサービスのホテルなら「あの朝食が食べたい」と、それを目当てに客がやってくる。だが、若い世代は近場のカフェのテイクアウトで済ませることもある。複数のメニューを用意せずとも、おいしいコーヒーとパンがあれば十分なのだ。
スタッフの制服にも、若手の意見が取り入れられている。ラフなTシャツとジャケット、チノパン、スニーカーというスタイル。社内でプレゼンし、社長以下、役員の前でファッションショーのように実際に歩いてみせたという。恵比寿店の場合、運営スタッフは11人とローコスト化を徹底しており、それぞれがチェックイン業務や、場合によっては客室清掃もこなす。親しみやすいイメージだけでなく、動きやすさも重視したスタイルだった。
苦労したのはサービスの割り切りだろう。若手社員も既存のプリンスホテルでの勤務経験があり、それぞれホスピタリティを備えている。簡略化にはやはり抵抗もあったようだ。
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