「小金持ちと大富豪の差」は出すゴミでわかる訳 ゴミ清掃員芸人「真の金持ちほどゴミが少ない」

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それは、僕が小さい頃から地名を知っていて憧れてもいた金持ち地域でのクレームだった。

「朝から出していたのに、何で回収してくれないんですか?」

どういうことだ? 完全にうそなのに何でそんなことを言うんだ? いつもゴミが出ているのに運転手も含めてもうひとりの清掃員と3人で「この家、出していないっすねー」という会話をしているから、間違いなく朝出し忘れている。そんな言い方をするなんて、金持ちけんかせずと言うけど、本当なのかねえなんて話をしていた。

仕方がなく回収に行くと、一軒だけポツンとポリバケツを出していた。「間違いない。こんなの出てなかった。ここだけ取らないなんてねえよな」と運転手がつぶやいた。「本当ですね。あ、いいですよ。俺端っこに座っているんで、取ってきちゃいます」と言って車から降りた。ポリバケツからゴミを取り出したときに、なるほどー、そういうことかーとうなずいた。

ポリバケツで悟った「人生の困難」

ポリバケツの底が得体の知れない水分で汚れているのである。

なるほど、なるほどー。神は細部に宿るとはいうが、それを象徴している。ポリバケツ自体が汚れているのは、きっとお手伝いさん的な人を雇っていないからだろう。憧れの金持ちの地域に住んでいても、人生のゴールではないと、まざまざと見せられた気がした。高級住宅地に住んでも、生活は続く。住んだら人生、成功ではない。成功とは、生活し続けることだと、僕はそのポリバケツで悟った。

見えもあるだろう。周りがしている生活を自分もしない訳にはいかない。隣の奥さんが持っているバッグと同等の物を持たなければならないのかもしれないし、アンチエイジングシリーズを買って、隣の奥さんとも張り合いたいのかもしれない。

この地のゴミを見てから、僕は、金持ち地域に住んでも生活が圧迫されていれば、手放しでうらやましいとは思えなくなった。わからないよ。予想でしかないから。しかし清掃員である僕は、ほかの家はポリバケツの底も締麗にしてあるのを見ているので、ここだけ汚いのはそれなりに理由があると思う。ゴミ清掃員もただゴミを回収しているだけではない。

中には住む土地が自分のアイデンティティーの一部になって、無自覚に苦しんでいる人もいる。身の丈に合う物に囲まれることが、いちばん幸せなのではないかと考えさせられる回収であった。高級住宅地にも高低があると思いながら、僕は取り出したゴミを清掃車に放った。

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