感染予防でヨーグルト食べる人に「欠けた」視点 日本人の「ヘルスリテラシー」はあまりに低い
前回の記事では、近い将来、AIドクターによる診察が主流になること、それにつれて人間ドクターの役割が「医療を作り出す人」と「患者に寄り添う人」とに二分されることなどを述べました。
では、これに対して患者の側はどう向き合えばよいのでしょうか。これに関して私は、まったく異なる2つの方向性がありうると考えています。
様変わりする医療とどう向き合うか
1つは、近未来の患者さんは医療に関して主体的に情報収集する必要もなければ、自分の健康に関する難しい選択(たとえば、リスクを伴う手術を受けるか、受けないかなど)をする必要もなくなるという方向性。要はAI医師が常に正しい知識をもとに正しい選択をしてくれるので、患者側は安心して身を委ねてさえいればいいという世界です。
もう1つありうるのは、医療技術の急激な進歩に伴って増大し、複雑化していく医療関連情報に対して患者側もある程度主体的に向き合い、能動的な情報の取捨選択をする必要に迫られるという方向性です。このどちらになるのかは私にもまだわかりません。現時点では両方の可能性が同じようにありそうに見えます。
すべての病気を克服することが医療の完成なのだとすれば、現在の医療はすでに9合目まで達している、と私は考えています。あと1合、頂上まで登りきった頃には、もしかしたら、患者さんの立場では何も考えなくて済むシステムも出来上がっているのかもしれません。
ただ9合目ということは、まだ1合分は確かに残っているということでもあります。富士登山では最後の8〜9合目で高山病にかかって下山を余儀なくされる人もかなりいるそうです。医療完成の9合目は、裏返せば医療情報の膨大化、複雑化もピークに近づきつつあるということですから、そのような状況ではヘルスリテラシーの重要性が相対的に高まっているということも言えます。
「ヘルスリテラシーとは何か」についてはさまざまな定義が存在します。デンマークの公衆衛生学者クリスティン・ソーレンセン博士は2012年に著した論文で、ヘルスリテラシーに関して以前から存在した「17の定義と12の概念モデル」について検討し、ヘルスリテラシーとは「ヘルスケア、疾病予防、健康増進という3つの領域の健康情報にアクセスし、理解し、評価し、利用できる、知識、意欲、能力のこと」であると整理しました。
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