感染予防でヨーグルト食べる人に「欠けた」視点 日本人の「ヘルスリテラシー」はあまりに低い

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博士によれば、ヘルスリテラシーを身につけることで、個人レベルの健康や生活の質の向上だけでなく、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)の形成などにより地域全体の健康増進にも貢献できるものとされています。

インターネットの登場により、一般の人が医学関連の情報にアクセスすることは以前に比べてずっと容易になりました。ただ、医学知識に詳しい一般の人が急に増えるということには、よい面だけでなく悪い面もあります。

とくに新型コロナウイルスの流行拡大期のような非常時は典型的でした。病気や人間の身体に関する知識を医学という体系の中で理解している医師が語る言葉と、科学的根拠のあやふやな情報(たとえば、「子宮を温めると新型コロナにかかりにくくなる」など)が、同じぐらいのボリュームで話されることの弊害は決して小さくありませんでした。

日本人の低い「ヘルスリテラシー」

そして、新型コロナウイルスをめぐる狂騒を通じて図らずも浮かび上がってきてしまったのは、日本人の健康に関するリテラシーがいかに低いか、ということでした。

人間の身体がどう作られていて、どのような疾患にどのくらいなりやすいのか、といった基本的な知識が欠如しているのに、新型コロナのようなことがあったからといって、急に断片的な知識を詰め込んで防衛しようとしても、連立方程式が解けない人がいきなり微積分の難問に挑戦するようなもので、ちょっと無理があります。

ところがその無理なことを皆がこぞってやってしまうのが、まさに「急場」「有事」を感じさせる出来事でした。少々にわか勉強であっても、新型コロナウイルス対策のために学ぼうとすることはもちろんよいことだと思います。同時に、今後も出てくるかもしれないさまざまな新しい問題に備えるために、ヘルスリテラシーの向上に気長に取り組むとよいのではないでしょうか。

新型コロナの流行初期には、ビタミンCやビタミンE、あるいは乳酸菌などが免疫機能を高めるので感染予防に役立つという話が広まり、それらを含有するドリンクやヨーグルトがたいへんに売れました。

未知の感染症がこれから猛威をふるいそうだと言われれば心配になるのは誰でも同じです。少しでも役立ちそうなことなら取り入れて不安を減らしたい、というのも人間の自然な感情として理解できます。

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