逆に共和党候補の勝利がほぼ決まっている州もある。文化的に保守的な南部州に多い。「ディープサウス(深南部)」と呼ばれる南部州の一つ、ミシシッピ州では、共和党候補が1980年以来、大統領選で10連勝してきた。
やはり結果が見えているため、民主党候補も共和党候補も選挙運動に力を入れない。こうして両党の候補者が選挙運動に本腰を入れるのは、「まだ結果の見えていない州」になる。いわば、民主党候補にも共和党候補にも勝てる可能性が残っている州だ。
両党に勝者が揺れているため、「スイング州」と呼ばれる。選挙戦が過熱するため「激戦州」や「接戦州」とも呼ばれる。世界中の関心も、こうした州に集中することになる。
例えば、2016年大統領選まで、代表的なスイング州の一つがオハイオ州だった。「オハイオを制する者が全米を制す」と言われるほどで、オハイオ州で負けても大統領になれたのは、1960年のケネディが最後だ。
2000年と04年に共和党ブッシュ(子)が、08年と12年に民主党オバマが、16年は共和党トランプが勝った。オハイオ州での勝者は過去20年間で、共和党→民主党→共和党と揺れてきたことになる。
どちらの党の候補にも勝てる可能性が十分にあり、かつ、オハイオ州には選挙人が18人配分されているため、両党は熱のこもった選挙戦を展開してきた。各陣営は、全米から選挙資金を集めて同州でテレビCMを流し、候補が繰り返し遊説に入る。
「スイング州」は情勢で変わる
ただ、どの州がカギを握る「スイング州」になるかは情勢で変わる。人口動態や失業率、地方選の結果などを反映し、選挙ごとに判断されている。こうした分析は全米の選挙関係者や報道関係者が熱心に研究し、その精度を競っている。
両党とも、なるべく効率的に選挙戦を展開したいので、刻々と変動する世論調査の動向に目を配っている。その一例として、先ほどのオハイオ州を見てみよう。2016年までは代表的なスイング州だったが、2020年大統領選では扱いが変わっている。
それはオハイオ州では、全米の傾向として民主党が善戦した2018年中間選挙で民主党候補が知事選で勝てず、どの下院選挙区でも民主党候補が奪還できなかったからだ。
そのためオハイオ州はもはや「スイング州」ではなく、「共和党が優勢の州」になったとの見方が広がった。ところが2020年になって雲行きが変わり始める。
新型コロナウイルス禍に加え、白人警官がミネソタ州で黒人男性を暴行死させた事件に対処できなかったとして、トランプ政権への批判が強まると、トランプ陣営も余裕があるはずのオハイオ州などでテコ入れを強いられた。どこがスイング州になるかは日々の社会情勢にも左右されている。