アメリカの大統領には、知事や上院議員などの政治経験者が多い。ネットメディア「Vox(ヴォックス)」が初代ワシントン以降の大統領の職歴を調べたところ、公職(公選職と任命職)も軍歴もないまま大統領に就任した例は皆無で、第45代大統領トランプが初めてだった。
トランプ以前の大統領44人の経歴を集計すると、就任前に平均して13年の公職と5~6年の軍歴があった。
4人に3人は何らかの連邦政府の仕事を経験してから大統領職に就いていた。44人のうち18人は連邦下院議員を、16人は連邦上院議員を、14人は副大統領職を、8人は長官職(Cabinet Secretary)を、17人は州知事を経験していた。
全体の半数以上に軍歴もあった。トランプ以外で公職経験がないのは、第12代ザカリー・テイラー、18代ユリシーズ・グラント、34代アイゼンハワーだが、この3人を合計すると100年以上の軍隊経験があったという。
ちなみに大統領の年収は、40万ドル(4200万円)。フルタイムで働くアメリカの給与所得者の年収中央値が約5万ドル(約525万円)で、8倍に相当する。ただアメリカの有名企業の最高経営者(CEO)に比べると、100分の1にも届かない。大統領職の責任や影響力を考えれば、抑えられた金額と言えそうだ。
選挙には巨額の金がかかる
大統領選の問題点として、金権政治化が長く指摘されてきた。アメリカ大統領選のコスト総額は、オバマが初当選した2008年まで上がり続けていたが、前回2016年は2004年の水準に戻った。それでも1回の大統領選で約25億ドル(約2625億円)が使われた。
長期戦を勝ち抜くのに不可欠なのが資金だ。使い道は、①人件費(全米各地に事務所を置き、選挙スタッフを雇う)、②旅費(候補者やスタッフが全米を行脚する旅費と宿泊費)、③宣伝費(テレビやラジオ、ネット用のCM費用)に大きく分類できる。近年は③が特に膨らんでいると指摘される。
問題視されることが多いのが、富裕層や企業から献金を無制限に受け取れる「スーパーPAC(Political Action Committee)」だ。
独立して活動することになっているが、実際は特定の候補や政党に近いことが多い。ひと握りの大富豪が大口の献金をしているため、「選挙が買収されている」と批判されてきた。
ワシントン・ポストは2016年11月の大統領選の1カ月前に、大口献金者の動向を分析した記事を掲載した。同年8月末の時点で、スーパーPACは総額11億ドルの資金を集め、大富豪10人の献金が全体の2割を占めていた。
かつて民主党候補は、大口の献金を受け取ることに慎重だったが、2016年の大富豪10人を分析すると、うち5人が共和党寄り、4人が民主党寄り、1人が無所属だったという。
この無所属は、後に民主党から大統領選に挑む、前ニューヨーク市長マイケル・ブルームバーグだったことを考慮すれば、ちょうど共和、民主両党が半分ずつと理解してもよさそうだ。
なお、これらスーパーPACの資金の使途を分析すると、大統領選と連邦下院選に関連した9月のテレビCMなどの宣伝活動に総額6億7400万ドルが注ぎ込まれていたことが判明したという。
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