規程に背く「不誠実な選挙人」も
アメリカ大統領の選び方の大きな特徴として、以下の4点がある。
①プロセスは、前半戦の「予備選挙」「党員集会」と、後半戦の「本選挙」と、大きく二つに分けることができる。大統領になるには、候補者は、まず党内レースである前半戦を勝ち抜き、党公認の候補者になる必要がある。
前半戦では、各党が「予備選挙」や「党員集会」を開くが、アメリカは二大政党制の国で、全米の注目は共和党、民主党に集中する。前半戦は州単位で実施され、選挙の年の2月頃から夏にかけて各地で順次開催される。支持を広げられない候補は多くの場合、途中で脱落する。
各党の指名候補が決まると、11月の本選挙に向けた後半戦に突入する。本選挙は、二大政党の指名候補の一騎打ちになることが多く、本格化するのは9月上旬のレイバー・デー明けだ。
②本選挙は「間接選挙」で実施される。有権者は「トランプ」や「オバマ」などと書かれた投票用紙にチェックをつけて投票しているので、大統領候補に直接投票しているように見えるが、実際は選挙人を選んでいる。この選挙人が州を代表して投票し、大統領を正式に選出している。
③本選挙は州ごとに実施されており、ネブラスカ州とメーン州を除く48州で「勝者独占方式」が採用されている。
この方式は、州内で1票でも多くを獲得した候補者が、その州に配分される選挙人を独占する仕組み。選挙人は全米に計538人いて、過半数「270人」を集めた候補者が勝者となり、翌年1月に大統領の職に就く。大統領選で「270」という数字が報道にあふれるのはこのためだ。
2016年にトランプは306人を、オバマは2012年に332人を、2008年に365人を集めて大統領に選出された(2016年、トランプは306人の選挙人を、ヒラリー・クリントンは232人の選挙人を集めたが、それぞれ一部の選挙人が規定に従わずに投票した結果、正式な記録としてはトランプ304人、クリントン227人となった。規定に背く選挙人は「不実な選挙人(faithless elector)」と呼ばれている)。