「消費者参加型企画」を成功させるには? なぜ、あの人のクチコミは影響力があるのか(3)

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消費者がソーシャルでクチコミしたくなる瞬間とは

ソーシャルメディアをマーケティングに組み込んだものの、フォロー数やファン数が伸び悩み、コメント投稿数やキャンペーン参加数の少なさからソーシャルメディアのマーケティング効果に疑問を持つ企業も多いと思います。では、どうしたら人が集まり、コンテンツが更新・蓄積される場になるのでしょうか。

筆者は、このカギを消費者のコストと消費者のベネフィットのバランスにあると考えます。多くのソーシャルメディアサイトは無料で利用できるため、消費者の金銭的コストはほぼゼロといえます。しかし、スマートフォンなどのデバイスを駆使し、次々と生まれるソーシャルメディアサイトのアカウントを取得してサービスを使いこなすためには「探索コスト」がかかります。そして、この消費者の探索コストが今増大しているのです。

モノでつながるSNSを例にとってみましょう。このサイトを活用するためには、お気に入りのモノ・コトを登録する(こうして形成されるネットワークをインタレスト・グラフと呼びます)、お気に入りの人を登録する(これによって生まれるネットワークをソーシャル・グラフと呼びます)といった手間が必要となります。これは、関与や製品知識の水準が低い消費者にとっては面倒で時間がかかるため、時間的コストが大きいといえます。

また、ソーシャルメディア上で他者とつながる、何かに「いいね!」を押す、といった行動は、ソーシャル・グラフ内の友人・知人のタイムラインに表示されます。公開の範囲を自分で設定できるサイトもありますが、ある行動によって上司や同僚からどう思われるか、という不安は心理的コスト、社会的コストに位置づけられます。

ソーシャルメディアに参加してもらい、消費者のエンゲージメントを高めるためには、こうした探索コストを超えるベネフィットを提供できることが条件です。ここでいうベネフィットとは機能的ベネフィット、情緒的ベネフィット、自己表現的ベネフィット、社会的ベネフィットが含まれます。ソーシャルメディアを通じて高いベネフィットを提供できれば、ソーシャルメディア上で消費者は他の消費者とつながり、製品・サービスへの共感を通じてコミュニケーションをとることが可能となります。

ここで、クチコミ発信者のベネフィットを考えてみましょう。発信者は何が嬉しくて発信しているのでしょうか。それは、一言でいうと他者からの共感、尊敬、感謝です。ここ数年、ゲーミフィケーションという言葉が流行りましたが、バッジやポイント、マイレージをご褒美に消費者のエンゲージメントを上げようとするのは短絡的な気がします。

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