「消費者参加型企画」を成功させるには? なぜ、あの人のクチコミは影響力があるのか(3)
こうして書くといいこと尽くめのようですが、コ・クリエーションの実践はそう簡単ではありません。オランダにあるコ・クリエーション専門のコンサルティング会社は、ゼロから新しい何かを作れる人を「クリエイター」、そして「ちょい足し」をする人を「編集者」と名付けました。残りは見ているだけの人です。
興味深かったのは、彼らはピラミッドの絵を使って、ゼロからネタを作り出せる人がトップ1%、編集できる人が次の10%、見ている人だけがその他、という説明をしています。これは、彼らの経験値のようです。
「見てくれているだけで、ありがたい」という視点
この話を聞くと、どうでしょう、安心しませんか? みんなで理想の製品をつくろう!という企画を実施したとして、製品アイディアを出せる消費者は1%、そのアイディアに対して、なんらかのコメントをつけて、編集に貢献できる消費者は10%、残りは見ているだけの消費者です。なかなか消費者が意見を書き込んでくれないと嘆く担当者の方は、この数値と比較してみてください。
また、見ているだけの人たちは、実は重要な存在です。観客の存在が舞台の上の俳優を奮い立たせるように、見ているだけの人たちの存在が、アイディアを出す人やコメントをつける人のモチベーションにつながるのです。なので、見ているだけの人たちに関しては、貢献をしてくれないことを嘆くのではなく、彼らが見てくれているだけでもありがたい、という視点が重要だと思います。
とはいえ、消費者参加型の取り組みで、どうしたら積極的な参加者が増えるのか、は重要な問題です。この問題に正面から取り組んだ本があります。Kraut教授とResnick教授が書いた、“Building successful online communities: evidence-based social design”という本です。この本は、オンライン・コミュニティに着目し、どうしたらユーザーが増え、活発に参加してくれるのかについて、豊富な事例とともに行動デザインの方法を紹介しています。
この本を読んでとても印象深かったのは「何でもいいから」、「いつでもいいから」、「誰でもいいから」、できるだけ参加してください、というお願いの仕方は効果的でない、ということです。何でもいい、ではなく、「このテーマで投稿してください」と指定する。「いつでもいい」ではなく、投稿期限を定める。「誰でもいいから」ではなく、名指しで依頼する。「できるだけたくさん」ではなくて、「××件投稿してください」と、数値を定める。
これらは、すぐに取り入れられそうなことばかりです。試す価値はあると思います。『キーパーソン・マーケティング:なぜ、あの人のクチコミは影響力があるのか』のなかでは、この本で挙げられている参加を促す仕組みの事例をもう少し詳しく紹介しています。
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