なぜ2度あることは3度あると思ってしまうのか 「Brexit×トランプ当選×再選」を信じる構造

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もう1つは、JRAの戦略が、私は賛成しないが、ビジネスとしては成功した、ということである。

日本の競馬会は互助会である。負けてもあらゆる手当が出る。調教師も厩務員も、組合に守られており、いわば「世界一の社会主義世界」だ。

騎手も以前はそうだったが、ここは自由競争が進み、外国人騎手が世界中から集まるようになった。馬は出走すれば出走手当が出る。1着だけでなく、事実上8着まで「賞金」が出る。レースで故障すれば見舞金が出る。至れり尽くせりだ。

そして、出走のための登録料が破格に安い。世界的には1着賞金の数%が相場だが、日本はかつて1万円だった。1億円の1万円だから、0.01%だ。現在は多少の改善がなされ、大きなレースなどは異なるが、全体的には同じようなやり方で行われている。

この結果、弱くても、勝てなくても、馬は出走してくる。そうなると、強い馬たちの進路を妨害したり、妨害でなくとも、展開に左右されやすいレースが増え、強い馬が必ず勝つ、という能力検定レースとしての役割が果たせないことが多くなる。スポーツとしての競馬としては最悪だ。

菊花賞はコントレイルから「馬単1点勝負」

しかし、ビジネスとしての競馬としては最高なのである。

まず、馬券が売れる。例えば6頭立てのレースは欧州では普通だが、それだと馬券の買う点数が少なくなる。大穴が出ない、というか存在しない。ギャンブルとしてつまらない。馬券が売れない。馬券が売れなければ、競馬界のタネ銭がそもそも入ってこない。競馬産業が発展しなくなる。

さらに、大穴を増やすために、欧米では単勝が主流だが、日本では馬連(枠連)だったし、さらに3連単を流行らせて、馬券の売り上げを維持した。特に3連単は荒れる。なぜなら、スポーツとしては、騎手は1着を目指して乗るために、有力な2~3番手馬は勝ちに行って本命馬に敗れ、バテたところを無欲の弱い馬が後ろから直線だけ追い込んで3着に入る、ということが良く起こるようになるのだ。だから、穴党は面白い。馬券が売れる。

このためには、6頭立てなどよりも18頭立てのフルゲートの方が断然良いのである。

かくして、JRAのおかげで、日本の競馬は世界一になり、25日は「世界一の日本競馬での最強馬」に、勝てるはずのない17頭が参戦し、日本の競馬は平和に発展していくことになった。

かくいう私も幸せだ。なぜなら、そういう穴馬券を買ってくれる人が居るから、私の本命馬券もオッズが付く。2枠3番のコントレイル1着で2着には相手を絞って、1800メートルでも2200メートルでも同じようなスタミナで走る6枠11番のバビットが3000メートルでも粘りを発揮する、という予想にする。馬単1点。6頭立てなら、2.8倍ぐらいだったろうが、24日朝の時点では8倍台だ。JRAに感謝する。

小幡 績 慶応義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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