「トランプ大統領」が想像できない以上「そんなことは起こるわけがない、と信じていた、いや希望していた。両者が混乱したまま、思考停止になっていたのだ。
その中で、前述の確証バイアスで「ヒラリー有利」の情報だけを受け入れていた。事前調査では「拮抗している」という情報もかなりあったのに、それは無視された。さらに、この場合は「ある種の想定外」、ということで「現実に悲惨なことになるシナリオに目をつぶる」「臭いものに蓋」「想定外の事象を過小評価する」という現象とも言えるだろう。ブラックスワンである。
「言論ギャンブラー」の私でさえ怖くなる
しかし、ここで問題なのは、トラウマになるような現象が2度続けて起きたことである。これで有識者と言われてきた人々はすっかり自信をなくしてしまった。
それで「トランプの逆転はありうる」というあり得ない予想に、「それはありえない」と言えなくなってしまっているのである。私も「もしトランプが当選したら、もうこのコラムの執筆は辞める!」と言いたいところだが、「言論ギャンブラー」の私でさえ、少し怖い。
なぜトランプ氏が負けると自信を持って言えるのか。それは、事前調査の結果がそうなっているからである。それはみんな知っている。ブレグジットも、前回のアメリカ大統領選挙も、それで結果は違ったではないか。ではなぜ今度だけ自信を持てるのか。そういう疑問を多くの方がお持ちだろう。
あなたは、すでに行動経済学でいうところの罠にはまっている。
それまでの2回と今回は、まるで違うのである。
第1に、2回のサプライズはサプライズでもなんでもなかった。かなり拮抗していて、ブレグジットなどは、完全に五分五分の事前調査だったのに、信じなかっただけだ。今回は、明らかに差がついている。
第2に、ブレグジットの事前調査は予測精度が高くなかったと思われる。国民投票はほぼ初めてだったし、事前調査に答えるサンプル有権者たちも自分がどう行動するか、よくわかっていなかったと思われる。
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