それは、アメリカの東部エリート層が伝統的に持つ「弱者の味方である自分に陶酔する思想」が嫌いだからである。
日本人から見ると、自分たちは苦労したこともなく、その痛みもまったくわからないくせに、偽善的に振舞っているような印象となるようだ。これはアメリカの低所得者層にもある程度共通で、前回の「アンチヒラリー(・クリントン)」、今回のトランプ氏への根強くかつ熱狂的な支持、さらには「エリートとワシントンとメディアの連合が生み出すフェイクニュースという都市伝説」を信じる土壌ともなっている。
アメリカや日本のアンチ民主党の是非はともかく、この結果、日本の知識層、官僚、保守寄りのメディアは、願望を込めて「民主党バイデンが負けることもありうるんじゃないか?」と予想している。
これは、行動経済学でいうところの確証バイアスである。
しかし、トランプ氏が勝つかもしれないと、ありえないことをまともな人々が言っている最大の理由は、前回トランプ氏が事前の予想に反して勝利を収めたことが一種のトラウマになっていることだ。前回もそうだったから、今度もありうるんじゃないか。そういうことである。
8人に1人は「為替の神様」になれる
普通は、人間は一度の意外な出来事では見方を変えない。1回目は偶然、いわば、まぐれである。しかし2回続くと、それはこれまでの見方を変更する動きにつながる。3度起これば、もうそれが必然になる。
「為替相場の神様」などと呼ばれる人はよく現れる。なぜなら、為替は上がるか下がるか、2択に過ぎないからである。「円高になる」と予言して、1回当たると、それはたまたま。2回連続で当たると、彼は天才。3回連続となると、彼は為替の神様になるのである。
しかし、これは2の3乗で確率8分の1だから、少なくとも8人に1人は神様がいることになる。「2度あることは3度ある」というのは、2度ありえないことが起きると「2回連続のショックは大きすぎて、その例外事象が、普通に起こるような気がしてくる」ことを表す。
2016年の「トランプショック」の場合は、実は伏線はブレグジット(イギリスのEU離脱)ショックにあった。ブレグジットは、金融市場も想定外の出来事で、当日地域ごとに票が開くにつれて、「意外、あれ、あれれ、あれれれれ、まさか!」となって、そこからドカーンと英ポンドが大暴落し始めた。
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