サザエさん「5連続パー」を奇跡だと感じる理由 統計学上、出る手の確率はいつも同じだが…
真壁:その前に3回連続して赤が出ていたとしても、次にルーレットを回したとき、赤が出る確率も黒が出る確率も半分半分、変わりはありません。すなわち、赤が3回続こうと10回続こうと、その次にルーレットを回したときに黒が出る確率は、やはり半分なのです。
このことを裏付ける「大数の法則」というものがあります。これは統計学の考え方なのですが、ルーレットを合計3万回まわしたとすると、だいたい1万5000回くらいは赤が出て、残りの1万5000回くらいは黒が出るというもの。つまり、何度も何度も数多く試行を重ねることで、その事象の出現回数が理論上の値に近づいていく定理のことをいいます。
ルーレットで赤と黒が出る確率は、それぞれ2分の1ずつなので、ルーレットを回す回数を増やせば増やすほど、赤と黒が出る確率は、それぞれ2分の1に近づいていくわけです。
話を元に戻しますと、赤が続けて3回出た場合、これまで3回しかルーレットを回していないので、3回まで赤が出たからといって、4回目で黒が出るという理屈は成り立たないのです。
中野:こうした統計の誤謬は、人間が引っかかりやすい典型ともいえるものです。ルーレットでも「次はこの色が出るに違いない」と決めつけてしまうと、統計学上では同じ確率になるはずにもかかわらず、ついつい4回連続で同じ色が来るはずがないなどと思い込んでしまうのですね。
シンメトリーに安らぎを感じる理由
真壁:人間は左右対称なもの、すなわちシンメトリーなものに安らぎを感じるところがあるのです。
例えば木。さまざまな形をしたものがあり、広葉樹などは自由に枝を広げています。
しかし、例えば針葉樹の杉や檜を見ると、「ああ、立派な木だなあ」と、安定感を覚えます。
考えてみると、杉や檜といった針葉樹は、基本的に左右対称に成長するので、人間は安らぎを感じやすいのでしょう。こうしたシンメトリー的なものを、とくに人間は好むのです。
ルーレットで考えた場合も、赤と黒が最終的に2つ並べば、左右対称でシンメトリーといった感じがするから、赤が来れば次は黒が来るだろうと思い込む。いや、そもそも思い込みたいだけなのかもしれません。それで安らぎを感じようとしているのではないでしょうか。
マーケティングでは、最初に提示された数字や条件が基準となって、その後の判断が無意識に左右されてしまうことを利用した「アンカリング」という手法があります。それに近い状態なのかもしれません。