トヨタの歪んだ釈明、巨大リコールの真因--規模拡大と品質は両立していた

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プリウスなどハイブリッド4車種のABS(アンチロック・ブレーキシステム)は保安基準に抵触しておらず、「本来リコールは必要なかった」(前出の畑村、鎌田両教授)。米国でのフロアマットにアクセルペダルが引っかかる案件も、消費者のミスユースをメーカーがかぶった極めて異例のケースだ。

アクセルペダルの戻りが問題になった案件は唯一、リコールらしいリコールといえる。電子制御システムが原因との指摘もあるが、業界関係者は別の見方で一致する。

車速を楽に保つなどペダル操作しやすいよう裏面に使った樹脂材が、水分を吸い込み、膨潤して戻りが悪くなる。そのため「樹脂材の選定などでトヨタ側に何かしら課題があるのではないか」(業界関係者)。

となると、ABSとフロアマットを除いた“実態”のリコール件数は1ページグラフの点線のような増え方にとどまり、大げさに騒ぎ立てるレベルではないことになる。

一方で、「改善対策にとどめるよりも、お客の不安解消を重視して踏み切った」(豊田社長)という異例リコールの影響は予想外に大きい。

プリウスABSの案件は、保安基準に抵触しないケースでも、ユーザーからの違和感によるリコールが行われるという前例を作った。今後しばらく、ユーザーの違和感を理由とするリコールは増える可能性がある。

そうなると、ミスユースか不具合かについて繊細な見極めが必要になるため、部品の作動や運転状況を記録するイベントデータレコーダー(EDR)やドライブレコーダー(DR)の搭載が進むだろう。

電子情報を記録するEDRは、国内ではまだエアバッグのような一部の安全部品に搭載が始まった段階。しかし、プリウスのリコールを受けて、今後、全面的に搭載が広がれば、メーカー側には相応の準備が必要となる。

映像や音声を記録できるDRは最近タクシーに導入され始めたが、自家用車に搭載するとなれば個人情報保護や費用負担をめぐって、国民を巻き込んだ論争に発展しかねない。

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