民主党が目指す最高裁判事増員は簡単ではない

実は「第2次世界大戦前」にもあった重要な事実

そうすることで、選挙の結果がすぐに出ずに泥沼化しても、その責任はトランプ大統領側にあるような「印象操作」ができる。だが、そもそも実は泥沼になって不利なのは、実はトランプ大統領側である。なぜなら、何も決まらない場合、今の時点で憲法が規定しているのは、ペロシ下院議長の暫定大統領就任だからだ。

実際、TIPレポートが出た後、トランプ陣営の重鎮で元ニューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニ氏が「やはり民主党は愚かだ」「彼らは自分たちの作戦を先に披露した」と笑っていた。 妄想だらけのTIPリポートで、ペロシ議長の暫定大統領の可能性については全く触れられていない。

あのルーズベルト大統領も失敗した「大変革」

そしてもう1つ、同レポートが触れなかったのが、TV討論会でマイク・ペンス副大統領が民主党のカマラ・ハリス副大統領候補に詰め寄った「最高裁のリサイズ」(現在9人と規定されている最高裁の人数を増員すること)である。なぜペンス副大統領はここを突いたのか、そしてなぜハリス氏はその質問に答えなかったのか。日本人にはすぐにはわかり難い、アメリカの根幹について、最後に触れておこう。

共和党の大統領が3人(1921-1933)続き、その最後のハーバート・フーバー大統領時代に起きた1929年の株の大暴落。その後の大恐慌で登場したフランクリン・ルーズベルト大統領(以後F.D.R.)は、立て続けに救済政策を打ち出し、国民の評価を得た。そして1936年の再選では民主党は歴史的大勝利を収めた。結果、上下両院で民主党はなんと70%を超える議席を占め、FDRはどんな法案も通せるような状態になった。

そこで彼が最初に着手した重要政策こそが、最高裁判事の数を増やすことだったのである(Judicial Procedures Reform Bill of 1937)。なぜなら、実はFDRは任期のかなり前半から、後に有名になったニューディール政策で、実現しなかった法案を何本もだしている。それらはすべて最高裁で否決されていたのだ。 それに怒ったFDRは満を持して、圧倒的な議会の優位性を武器に最高裁自体の再編成を試みた。

だが、当時のアメリカ人は、FDRこそ評価したものの、アメリカの国家として原則の否定、国家の解体につながる可能性のある最高裁の再編成までは認めなかった。このとき、途中から民主党上院から法案への離反者が続出、法案は「死に体」となり、翌1938年の中間選挙で民主党は70人以上の下院議員を失い、上院も7議席減らした。その後、アドルフ・ヒトラーを中心に世界情勢が緊張へ向かうなか、FDRは政策の軸を「アーセナルオブデモクラシー」(全体主義に対峙する同盟国への軍事援助)へ舵を切っていくことになった。

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