民主党が目指す最高裁判事増員は簡単ではない 実は「第2次世界大戦前」にもあった重要な事実

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だが、筆者は、トランプ大統領は、彼らがいうような単純な幻想の興行師ではないことを知っているつもりだ。そこには非常識を嫌う「Wisdom of Crowds型」のエリートが及びもつかない天才性がある。今回のフロリダでの挑発的な言動も、のちに関係者の間で語り草となっている1990年代の場面を彷彿とさせた。

当時のトランプ大統領は、といえば、不動産とカジノの経営がダブルで破綻し、人生最大の苦境に陥っていた。彼が自宅のトランプタワーの前に座るホームレスの男性を見て、まだ小学生だった娘のイバンカに「彼は(債務超過で資産がマイナスの)僕よりも8000億円もお金持ちなんだよ」と、ポツリとこぼしたという話は有名だ。

これは、後に父親が大統領になるなど思いもよらなかったはずの高校生のイバンカが、米大手企業ジョンソン&ジョンソンの御曹司が「仲間」を集めて作ったドキュメンタリー「Born Rich (2003) ]の中で述べている話だ。その後、トランプ大統領は、前述したザ・トランプモーメントを迎えることになる。以下こそが、2017年のCNNの "All Business: The Essential Donald Trump“から一部を引用してわかりやすく訳した「ザ・トランプモーメント」である。

1990年代、息の根がとまりかけたトランプ大統領

1970年代の荒廃したマンハッタン。「マンハッタンの地域には手を出すな」との自分のアドバイスを無視し、1980年代、いったんはそのマンハッタンの開発で息子は大成功を収めた。だが、その息子が調子に乗りすぎてカジノ経営で大失敗。そこにポール・ボルカー(FRB議長、1979年から8年間)の「インフレ退治政策」による、長短金利の逆ザヤから商業不動産の大不況が到来した。

この政策で1990年代初頭、トランプ大統領は苦境に陥った。そのとき父親は、苦境に落ちた息子のカジノへ行き、ゲームで負けてもいないのに、名前も言わずにテーブルで3億円のチェックを切ったという。事前に、その道のプロの知人から「お前の息子はカジノ経営を知らない。彼はもうだめだ」、と言われていたという。

そんな父の思いもむなしく、NYの銀行から借りられるだけ借りたトランプ大統領は「まな板の上のコイ」として債権団と向かい合った。そこでトランプ氏は、自分が用意した再建案を披露する。

だがそれをけんもほろろに債権団に否定されると、彼はおもむろに休憩を申し出て退席した。

次ページ席に戻ったトランプ大統領の「大逆転劇」とは?
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