「愛の不時着」がなお人々の心を掴み続ける必然 「フロムの名著」が教えてくれる"愛"の本質

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そしてもう1つ、愛が必要な理由は、人は1人で生きられないからです。人間の最も強い欲求は、孤独から逃れることだとフロムは書いています。攻撃本能のままに殺し合って、自分だけ生き残ったとしたら、そんな世界は地獄ですよね。だから愛することで他者と合一し、孤独を克服して、人類は滅びずにきたのです。

――『愛するということ』で、多くの人が誤解している問題として、「愛する能力ではなく、どうすれば愛されるようになれるか?」と考えていることとありました。なぜ「愛されたい」が問題なのでしょう?

人から愛されることも大事ですが、それだといつまで経っても成長できません。愛するほうにならないと、人間として成長できない、それに尽きるんですよね。愛することは、誰もが簡単に浸れるものではなく、成熟した大人にしかできないとフロムは言います。自分ファーストではなく、相手の立場に立って、想像力を働かせるということですね。そのうえで物事を判断するか、何も考えずに判断するかでは、大きな違いが出るでしょう。

そういう意味で、あくまで私の感じ方ですが、現代の日本には自分本位の人が多いと感じます。「この人と一緒にいたい」という気持ちがあっても、その背景にあるのは「自分が心地よいから」という気持ちではないか。相手の幸せを考えて「一緒にいたい」と思うのと、かなり距離があるのではないでしょうか。

愛は、愛情を贈ることから始まる

「ヒューマンズ」という海外ドラマがあります。近未来の社会では、どこの家にもアンドロイドがいて、性行為の相手もしてくれる、という設定です。ロボットや人形であれば、相手のことを考える必要がないので、生身の人間よりもいい、という人が増えているようにも感じられます。愛が育ちづらい社会なのかと感じてしまいます。

――今、セクハラ・パワハラ問題に社会が敏感になっています。上司や先生は、愛情を持って部下や生徒に接したくても、本音でぶつかりづらい風潮ができ、愛につながるような交流も生まれづらい……と想像するのですが、アドバイスはありますか。

愛は、愛情を贈ることから始まります。それは相手の反応を期待するのではなく、純粋に愛情を示すことです。パワハラやセクハラになるのは、愛情があるから親しく迫ってもいいんだと、表面的に考えるからです。立場の違いや距離感も考えて、遠くから愛情を示すことを意識すれば、問題は起きないと思いますよ。

人を愛することは自分を愛することでもあり、かつ人類全体を愛することにつながっていくと、フロムは説いています。そういう状態は理想であって、今まで存在したかどうか疑問もありますが、到達目標がないと目指すこともできませんから。『愛するということ』は60年以上前の本ですが、現代にも通用する部分がきっとたくさんあると思います。

肥沼 和之 フリーライター・ジャーナリスト

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こえぬま かずゆき / Kazuyuki Koenuma

1980年東京都生まれ。ルポルタージュや報道系の記事を主に手掛ける。著書に『究極の愛について語るときに僕たちの語ること』(青月社)、『フリーライターとして稼いでいく方法、教えます。』(実務教育出版)。東京・新宿ゴールデン街の文壇バー「月に吠える」のオーナーでもある。ライフワークは愛の研究。

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