アメリカ人が興奮「コロナ禍の新たな買い物法」 ネット通販では満たせなかった「欲」にリーチ
今年3月、新型コロナウイルスのパンデミックで何百という店舗が休業に追い込まれたのを受けて、スポーツ用品チェーン大手のディックス・スポーティング・グッズはわずか2日という短期間で「カーブサイド・ピックアップ」を立ち上げた。ネットで注文した客が店の駐車場や店頭で商品を受け取れるようにするサービスで、いわばドライブスルーの変形だ。ただ、当初の試みは子どものレモネード売りと大して変わらなかった。
「車で店に行くと、電話番号の書かれた紙が窓に張り出されている。それで客が固定の電話回線を使って店内に電話をかけると、注文した商品が車まで運ばれる、という仕組みだった」と、ディックスのローレン・ホバート社長はこの「すごく残念な」サービスについて語った。メールやSMSへの対応は後回しになっていた。
アメリカ人の欲は「宅配」では満たせない
これが「残念」だったかどうかはさておき、カーブサイド・ピックアップはロックダウン期間中、ディックスの売り上げを救った。それだけではない。ネット通販時代を長期にわたって生き延びる最良の戦略として、この方式を取り入れる小売業者が増えている。
コロナ禍をしのぐ間に合わせの策として始まったカーブサイド・ピックアップは、人々の買い物の仕方に永続的な影響を与え、落ち目の実店舗に新たな存在意義をもたらす可能性が高い。
カーブサイド・ピックアップの人気は、小売の未来が宅配型のネット通販だけではないことを明らかにした。店の駐車場などで商品を受け取るこの販売方式は、ショッピングで人との接触を減らせるだけでなく、車で店に出かることを好むアメリカ人の嗜好にも合っている。車で店に出かける楽しみは、アメリカ人にとっては宅配の便利さをも上回ることがある。
「アメリカ人は車での移動が当たり前。店に行くのも本当に好きだ。つまり、これはいいとこ取りのハイブリッドといえる」と、コーウェンの小売りアナリスト、オリバー・チェン氏は語る。
小売り・テクノロジー業界専門の調査会社コアサイト・リサーチによると、実店舗を主体とするアメリカの小売企業上位50社におけるカーブサイド・ピックアップの導入状況は、8月時点でおよそ4分の3に達した。セーターから書籍に至るまで、今では何でもサンドイッチと同じくらい簡単にドライブスルーで受け取れるようになっている。