アメリカ人が興奮「コロナ禍の新たな買い物法」 ネット通販では満たせなかった「欲」にリーチ

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小売大手のターゲットは、8月1日までの第2四半期にカーブサイド・ピックアップの売上高は700%を上回って伸びたと発表。家電量販のベスト・バイも8月1日までの第2四半期にネット通販の売上高が50億ドル近くまで拡大し、過去最高を記録した。うち41%が店舗内での受け取りを含むカーブサイド・ピックアップだったという。

カーブサイド・ピックアップの台頭は成長著しいネット通販の一環を成しており、働き方に変革を迫る可能性はあるが、小売りの雇用確保につながりそうだ。ネット通販へと客が大量に流れ、閑散としてしまった実店舗のスペースに意味を持たせるのにも役立つ。

ラストワンマイルを顧客が担ってくれる

カーブサイド・ピックアップなら、一部の大型店はネット通販用に店舗を物流センターに転換しつつ、採算のとれない宅配には手を出さない、といった対応も可能になる。

ネットで注文した商品を受け取りに客が店舗に出向くことで、「客がラストワンマイル(物流の最終段階)を引き受ける形だ」とチェン氏は言う。同氏によれば、宅配で最もコストがかかるのは、このラストワンマイルだ。

カーブサイド・ピックアップの人気は、コロナ禍によってアマゾンが自慢のサプライチェーンの停滞に悩まされ、いつもならスムーズな宅配システムに混乱が生じる中で高まっていった。トイレットペーパーから庭で使う簡易プールまで、あらゆる商品に注文が殺到した結果、アマゾンでは在庫切れや便乗値上げ、商品の遅配、配送ミスが目立つようになっていた。

アマゾンの混乱が追い風となったのが、ディックス、ベスト・バイ、ターゲット、ウォルマートなどのチェーン店だ。これら大型チェーンは特に夏にかけて、何千という店舗の品ぞろえを生かしてカーブサイド・ピックアップの波をとらえた。

「どこもそうだが、アマゾンは当初苦戦した。ドカーンと注文が急増したからだ。その勢いがあまりにも急だったため、システム全体がやられて、処理がまるで追いつかなくなった」。こう語るのは、ホールフーズの元共同最高経営責任者で、食品関連の投資会社S2Gベンチャーズのエグゼクティブ・イン・レジデンス(客員経営者)を務めるウォルター・ロブ氏だ。

「そうした中でネット通販に俊敏に対応した会社は、いくらか陣地を拡大することができた」

カーブサイド・ピックアップは、ウォルマートなどのチェーン店に大きなメリットをもたらしている。採算を確保するのがおそろしく難しいネット通販で利益を上げられるようになったからだ。ターゲットによると、店舗の商品をカーブサイド・ピックアップ方式で販売するのにかかるコストは、配送センターから宅配するのよりも平均して約90%も低く抑えられる。

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