あの日高屋が「パスタ店」に乗り出す切実な事情 「一本足打法」脱却へ問われる多角化への本気度

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とはいえ、成長を牽引してきた日高屋への依存度はあまりに大きい。2020年2月期の売上高において、日高屋が占める割合は94.3%と圧倒的だ。第2の収益源である居酒屋業態「焼鳥日高」でさえ、同5.2%にすぎない。

中長期的な出店計画の柱も日高屋のままで、「これまでの戦略が間違っていたとはまったく思っていない。今後もまずは日高屋で出店を検討し、合わなければ別業態を出す」(島氏)と同業態への信頼は絶大だ。

新業態の多店舗展開には及び腰

一方、新業態の経営を軌道に乗せるまでの道のりは険しい。2019年12月に埼玉県大宮市のロードサイドへ出店した「ちゃんぽん菜ノ宮」は売り上げが伸び悩み、わずか7カ月で業態転換を迫られた。

緊急事態宣言の発令などで客数が激減しただけでなく、アルコールやセットメニューの注文が想定を下回ったためだ。鈴木氏は「利用客の多くがちゃんぽん単品だけで満足してしまった。今のメニュー構成で多店舗展開は難しい」と肩を落とす。

こうした現実を突きつけられたハイデイ日高からは、日高屋依存への危機感とは裏腹に、新業態の多店舗展開について「まだ評価段階」(島氏)と及び腰な面も見受けられる。8月に出店したスパゲッティ専門店の亀よし食堂は当面、メニュー開発に注力するとして、さらなる出店計画を持たない。居酒屋業態を想定して開発中の餃子専門店も、出店を保留している。

2020年9月末時点で日高屋が402店舗、焼鳥日高が32店舗あるのに対して、実働する新業態はいまだ5店舗だ。的確なニーズの分析に基づいて業態を開発すると同時に、それらの出店ペースを加速し、収益構成の多角化を推し進めることができるか。「日高屋一本足打法」からの脱却に向けた、経営陣の本気度が試されている。

佃 陸生 東洋経済 記者

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つくだ りくお / Rikuo Tsukuda

不動産業界担当。オフィスビル、マンションなどの住宅、商業施設、物流施設などを取材。REIT、再開発、CRE、データセンターにも関心。慶応義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)修了。2019年東洋経済新報社入社。過去に物流業界などを担当。

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