中国「CO2排出実質ゼロ」宣言、実現すれば画期的 気温上昇を0.3度抑制、産業競争力も強化される

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中国の努力によって平均気温の上昇が0.3度抑えられるとすれば、そのことによる効果は非常に大きい。2018年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告書によれば、気温が0.5度が違うだけで、世界で発生する大洪水や酷暑、氷河の融解などの被害は大きく異なる。

パリ協定の努力目標である気温上昇を1.5度に抑えた場合には、2度の場合と比べ、熱波に見舞われる世界人口を17億人も減少させ、海面上昇の影響を受ける世界人口も最大1000万人減少させると予測されている。

すなわち、今最も求められているのは、世界各国が削減に努力し、気温上昇をパリ協定の努力目標である1.5度に可能な限り近づけることだ。そうした中での発表であったため、中国の新方針は国連をはじめ、欧州各国や世界の環境NGOからも歓迎された。

世界のリーダーとしてアピール

中国による2060年実質ゼロ発表の背景には、新型コロナウイルスの発生源となったことや香港の民主化運動弾圧への批判をかわし、温暖化対策に消極的なトランプ政権との違いを打ち出すことで、世界のリーダーとしてアピールする狙いもあると思われる。

一方で、今後の脱炭素社会を見すえた経済成長策としての面も大きい。習主席は演説の中で、コロナ禍からの経済回復に当たってパリ協定に沿った低炭素にもとづく経済開発を進めるべきだとして、「グリーン革命」を提唱し、国際協力を呼び掛けた。

中国は、すでに再生可能エネルギー、特に太陽光パネルと風力発電設備生産では世界トップクラスにあり、太陽光発電および風力発電の導入量はともに世界1位だ。中でも風力発電の設備容量は全世界の約30%を占めている。電気自動車の生産台数も世界一だ。すなわち、脱炭素社会へのシフトには中国産業の国際競争力を高める狙いがある。

中国では、この夏も長江の中・下流域などで大洪水が発生し、多くの死者や行方不明者を出した。深刻化する大気汚染に対しても中国国民の不満は高まっている。環境問題が習政権にとってますます大きなリスクとなる中、大気汚染対策と表裏一体の温暖化対策の強化は時代の要請でもある。

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