中国「CO2排出実質ゼロ」宣言、実現すれば画期的 気温上昇を0.3度抑制、産業競争力も強化される

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中国は2060年までにCO2の排出を実質ゼロにする方針を打ち出した。写真は中国北部ハルビンで2019年11月撮影(写真:ロイター/Muyu Xu)

中国の習近平国家主席は9月22日にニューヨークで開催された国連総会で演説し、二酸化炭素(CO2)排出量を2030年までに減少に転じさせ、2060年までに「カーボンニュートラル」(CO2の排出量と除去量を差し引き実質ゼロにする)を目指すと表明した。

中国は世界最大のCO2排出国で、2017年時点で世界全体のCO2排出量の28%を占めている。それだけに、この発表はかなりの驚きをもって迎えられた。

特に、地球温暖化対策に関するパリ協定離脱を表明しているアメリカのトランプ大統領が自国第一主義を改めて強調した演説の後だったため、習主席は参加国に鮮明な印象を与えることに成功した。

排出ゼロで平均気温を0.2~0.3度引き下げ

これまでに中国がパリ協定の事務局に提出していた目標は「2030年までにGDP当たりの原単位排出量を2005年比60~65%削減する」というものだった。今回は長期目標とはいえ、中国は原単位ではない総量としての目標を初めて打ち出したことになる。

中国はこれまでの国連における交渉の中で、歴史的に排出責任があるとして先進国を厳しく批判する一方、自らは途上国であるとして総量削減目標に踏み込んでこなかった。その点からしても、今回の方針転換の意義は大きい。

パリ協定は、産業革命以降の地球の平均気温上昇を2度未満に抑えるという長期目標を掲げている。だが、パリ協定事務局に提出されている世界各国の削減目標を合計しても、この長期目標には到底届いていない。対策を強化しなければ平均気温は2.7度程度上昇してしまうと予測されている。

気候変動問題に取り組む民間研究機関クライメート・アクション・トラッカーとカーボンブリーフによると、今回の中国の方針は世界の平均気温の上昇を0.2~0.3度も引き下げる効果を持つという。

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