インドで政権交代、日本への影響は? 地滑り的圧勝でインド人民党が10年ぶり政権復帰
低カースト出身だが社会主義でなく新自由主義を唱える
しかし、貧しいからといって「社会主義」に向かうのではなく、「自由主義経済」を支持し、地元グジャラート州の首相として10年以上にわたり同州に経済成長をもたらしました。そうしたところが、左派政党の票田であるはずの農村の貧困層にも受け入れられる素地となったのです。さらにクリーンイメージがあり、落ち着いていて雄弁、シニカルなジョークを飛ばす頭のよさもある。2年ほど前からモディ待望論が起こり、気がつけば人気が全国区になり、今回の結果となりました。モディがいなければ、BJPが勝つのは難しかったと思います。ほかにめぼしい首相候補はいませんでした。
――農村の貧困層が動いたのですね。
インド人の友人と電話した際に、ついでにどこに投票したか聞いてみましたが、やはりBJPでした。そもそも都市部でビジネスする人は、BJPあるいは地域政党を支持することが多いです。
BJPは、都市部の中間層にもともと支持されてきました。問題は低所得層、貧困層からどう票を獲得するかです。貧困層に難しい経済政策を話してもわかりません。では、何が味方したのか。モディのカーストです。同氏は「ガンチー」と呼ばれるインド北西部中心の「油を精製して売るカースト」に属します。さらにサブ・カーストの「モド・ガンチー」に属します。このサブ・カーストは、「OBC(Other Backward Classes:後進諸階級)」と呼ばれ、国が社会的弱者として指定した低カーストに属しています。
つまり、「貧困を知っているOBC出身のモディをリーダーに」、BJP陣営は、これを積極的に利用しました。モディ自身は「選挙戦でカーストを前面に押し出さないように」と指示していたようですが、間違いなく追い風になりました。「ヒンドゥー社会で身分の低いモディが、地道に努力を重ねて、愛国を唱え、経済においては新自由主義を唱える」というストーリーは人々を魅了し、説得力があります。「(前政権の)金持ちの左派」対「貧乏な右派」という構図を作り出すことに成功し、通常は左派に票が行きやすい貧困層の大票田が動いたということです。
――なるほど、低いカーストも有利に働き、低所得層が動いたと。
低所得層が動かなければどうにもなりません。前政権のように財政赤字にもかかわらずバラマキを訴えることよりも、自らの出自が武器になったということです。ただ、OBCであるという主張に対して「モディは偽のOBCだ」「低カーストのフリをして有権者をだましている」と国民会議派は指摘してきました。
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