福島原発訴訟、国と東電が「全面敗訴」の衝撃

安全対策の不備を認定、福島全域が賠償対象に

判決文は本文だけでも500ページを超す。原発事故を引き起こした原子力事業者である東電のみならず、規制機関である国の責任についても詳細に検証したうえで丁寧に認定しているためだ。判決文には事故防止の努力を怠った国の責任について次のような記述がある。

「保安院(=旧原子力安全・保安院)の対応は(中略)、東電による不誠実ともいえる報告を唯々諾々と受け入れることとなったものであり、規制当局に期待される役割を果たさなかったものと言わざるをえない」

「一般に営利企業たる原子力事業者においては、利益を重視する余り、ややもすれば費用を要する安全対策を怠る方向に向かいがちな傾向が生じることは否定できないから、規制当局としては原子力事業者にそうした傾向が生じていないかを不断に注視しつつ、安全寄りの指導、規制をしていくことが期待されていたというべきであって、上記対応は規制当局の姿勢として不十分なものであったとの批判を免れない」

生業訴訟の二審判決文。旧保安院は「東電による不誠実ともいえる報告を唯々諾々と受け入れることとなった」と厳しく批判された(編集部撮影)。

このように、さまざまな検証を尽くしたうえで高裁判決は一審よりも踏み込み、国の責任について東電と同等に重いものがあると認定した。

国と東電が問われた重い責任

東電が問われたのは、原発の全電源喪失を引き起こして原子炉の冷却を不能にする津波の予見可能性および重大事故を回避できたかどうかだ。

仙台高裁判決では、国の地震調査研究推進本部が2002年7月に策定した日本海溝沿いの地震の可能性に関する「長期評価」に基づき、遅くとも同年末頃までには福島第一原発の原子炉の敷地高さを超える津波が到来する可能性について東電が認識しえたと判断した。

そのうえで、水密化など必要な対策を講じていれば、浸水による非常用ディーゼル発電機や配電盤など重要機器の機能喪失を防げた可能性が高いにもかかわらず、東電が対策を怠っていたことについて、国が電気事業法などの法令に基づき必要な規制権限を行使しなかったとして「違法」だと認定した。

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