福島原発、見えぬ「トリチウム水処分」のゆくえ 地元林業、水産業者は処理水放出に反対姿勢
福島原発事故で発生した放射性物質であるトリチウム(三重水素)が残留している処理水の処分方法をめぐり、経済産業省と東京電力が一定基準以下に薄めて海などに放出する検討を進めている。こうした動きに地元の福島県内では反対の声が根強く、調整は難航しそうだ。
経産省は、福島第一原発内のタンクに貯められた、通称「ALPS」(多核種除去設備)と呼ばれる設備で処理した水の取り扱いを検討する委員会の報告書を2月10日に取りまとめた。地元の意見を聞いたうえで政府としての処分方針を決めるとしており、そのための意見聴取会を4月6日に福島市内で開催した。
会合では経産省の報告書が示した海洋放出などの案を積極的に支持する声はなく、納得のいく説明を求めたり、再考を促す意見も相次いだ。経産省では引き続き関係者の意見を聞くとしているが、出口の見えない状況が続く。
約400年分のトリチウムを含む処理水
福島第一原発の敷地内には3月現在、約980基のタンクに、「ALPS処理水」と呼ばれるトリチウムを含んだ水などが保管されており、その保管総量は120万トン近くに達している。
タンク内のALPS処理水に含まれるトリチウムの質量は、純トリチウム換算でわずか16グラムだが、放射性物質の総量は約860兆ベクレル。福島第一原発が事故前の1年間に海に放出していた量の約400年分に相当する。さらに、原子炉建屋などの地下にある汚染水には、さらに多くのトリチウムが残存している。
経産省と東電はこれまで、セシウムなどの放射性物質を取り除く浄化処理に伴って増加したタンクが敷地に広がり、「今後の廃炉作業に支障を来しかねない」と危機感を表明。2013年12月から約2年半にわたって、専門家などがALPS処理水の処分方法やコストについて議論を続けてきた。
そのうえで、2016年6月には、ALPS処理水に含まれる濃度のトリチウムの分離・除去は現在の科学技術では困難であり、トリチウムを含んだまま海水で希釈したうえで海洋に放出するのがもっとも安上がりであるとの試算結果を示した。
一方、ALPS処理水の大元は、原子炉建屋に流入した地下水が溶け落ちた核燃料に触れて発生した汚染水であり、一定レベル以下に浄化したとしても、海などに放出すれば地域経済や社会に影響を及ぼしかねないことからさらなる検証を進めていくとした。
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