福島原発訴訟、国と東電が「全面敗訴」の衝撃

安全対策の不備を認定、福島全域が賠償対象に

高裁では、「現地進行協議」と称して帰還困難区域や旧居住制限区域の現状を裁判長らが視察。「荒廃した家屋や元に戻らない生活の実態を確認してもらえたことが、損害額の上積みにつながった」と馬奈木弁護士は振り返る。避難指示が出なかった福島県の会津地方や栃木県北部も住んでいた子ども・妊婦の原告について、新たに損害を認定したのも、今回の高裁判決の特徴だ。

ただし、福島市や郡山市など原告数の多い「自主的避難等対象区域」については、妊婦・子どもに対する賠償額が上積みされた一方で、成人について賠償額が一審判決よりも減額された。

前出の除本教授は「(自主的避難等対象区域など)避難指示区域外については賠償額の水準が地裁判決と同様に(全般的に)低いままになっている。その一方で、会津地方を含む福島県全域に関して面的な被害が認められたことは、今後、国の賠償方針見直しを実現していくうえで追い風になる」と解説する。

原発事故からまもなく10年が経過

この先の焦点は国と東電が判決を受け入れるか否か、そして2021年1月および2月に東京高裁で予定されている2つの判決(群馬県と千葉県に避難してきた住民らが起こした訴訟)への影響だ。いずれにおいても国の責任が認められるかが焦点であり、それを踏まえて事実上の賠償基準とされている中間指針の見直しにつながっていくかどうかが注目される。

ただ、先行して2020年3月に仙台高裁で原告勝訴の判決が出た「避難者訴訟」に関し、東電は事故を防ぐことはできなかったとして最高裁に上告の手続きをしており、徹底抗戦の姿勢を崩していない。今回の生業訴訟の判決についても、「今後、判決内容を精査し、対応を検討していく」(東電広報室)としている。

原発事故から2021年3月で10年を迎える。被害者の高齢化が進み、すでに鬼籍に入った原告も100人近くになる中で、早期の決着が求められている。

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