福島原発訴訟、国と東電が「全面敗訴」の衝撃

安全対策の不備を認定、福島全域が賠償対象に

そして、東電の安全対策義務違反の程度が「決して軽微とは言えない」ことを理由に、対策を怠ったことが「原告に対する慰謝料算定に当たって考慮すべき要素の一つとなる」として、原子力損害賠償法で定められた無過失責任原則に基づく中間指針や東電の自主賠償基準に基づく金額よりも損害賠償額を上積みした。

国については、「経済産業大臣の技術基準適合命令に係る規制権限の不行使は、遅くとも2006年末までには国家賠償法の適用上違法となったというべきであり、この時点においては経産大臣の過失も認められる」として、東電と等しい賠償義務を認定した。一審は国の責任について東電の2分の1とされていたが、今回の二審判決では同等の責任を認定した。

後に続く訴訟にも大きく影響

今回の判決内容について、原発事故訴訟に詳しい除本理史・大阪市立大学大学院教授は「全国各地で出されてきた今までの一連の地裁判決と比べて、国や東電の責任について踏み込んだ判断が出された。特に長期評価の信頼性について詳細に認定したうえで、国の規制権限不行使を厳しく批判していることが注目される」と指摘する。

9月30日の二審判決で垂れ幕を掲げて仙台地裁に向かう原告団(記者撮影)

昨年から今年にかけて、地裁では国の責任を否定する判決が相次いでいただけに、「その流れを反転させるきっかけになり、後に続く訴訟にも大きく影響するだろう」(除本教授)とも評価している。

被害者救済についても高裁判決は大きく踏み込んだ。「帰還困難区域」や「旧居住制限区域」、「旧避難指示解除準備区域」など原発から近い旧避難指示区域に住居があった原告への損害賠償額について、国の中間指針や東電の自主賠償基準を超える損害額として1人当たり各150万円、300万円、250万円を認めた。一部の例外を除き、中間指針などの水準を超えなかった地裁判決と比べても「大幅な前進となった」(馬奈木厳太郎・原告弁護団事務局長)。

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