「7人に1人」グレーゾーンの人が苦しい根本原因

身近な子どもが「非行少年」に変わる瞬間

ここで認知機能とは、記憶、知覚、注意、言語理解、判断・推論といったいくつかの要素が含まれた知的機能を指します。人は五感(見る、聞く、触れる、嗅ぐ、味わう)を通して外部から情報を得ます。そして得た情報を整理し、それらを基に計画を立てて実行し、さまざまな結果を作り出していくのです。

「対人力」に関しては、「感情の問題」「自己評価の問題」「会話力の問題」「柔軟さの問題」などに分けて考えられますが、これらの背景にも、相手の話をしっかり聞き取ったり、表情を読み取ったりするためにやはり認知機能が大きく関わってきます。

そして、発達的な問題としての「身体力の弱さ」は、「身体的に不器用」とも言えます。身体的不器用さには、発達性協調運動症(developmental coordination disorder)という疾患が関係していることがあります。

サポートを受けにくいグレーゾーン

では、こういった生きづらさを持った子どもたちや大人になって忘れられてしまう人たちはいったいどのくらいの割合でいるのでしょうか。

先述したように、「境界知能」というくくりがあります。「知的障害グレーゾーン」とも言われ、はっきりと知的障害の診断まではつかないものの、IQは正常域でもなく、さまざまな困難さを抱えた人たちがこれに相当します。

このグレーゾーンは、知的障害の定義の変遷から見ていくのが最も理解しやすいでしょう。現在の知的障害の定義では、おおよそIQ70未満で社会性に障害があることとなっています。この定義であれば、およそ2%の人が知的障害に該当することになります。

しかし、ひと昔前のWHO(世界保健機関)によるICD(国際疾病分類)第8版(ICD-8:1965~1974年)では、IQ70~84までが境界線精神遅滞といった定義がなされていました。

「精神遅滞」は、いまで言う「知的障害」のことです。つまり現在の「グレーゾーン」は、かつて「知的障害に含まれていた」ことになります。これは実に、人口の約14%(日本では約1700万人)に相当するのです。つまり、およそ7人に1人がこのグレーゾーンであるということになるのです。

その後、第9版(ICD-9:1975~1984年)以降になると、知的障害は現在のIQ70未満に変更となりました。変更の背景には、IQ70~84までも含めてしまうとあまりに知的障害の人口が多くなってしまうなど、さまざまな事情があったと推測されます。

そこで境界線精神遅滞は「境界知能」、つまり「グレーゾーン」として認識されるようになりました。

しかしここで問題となるのが、グレーゾーンと認識が変わったにせよ、IQ70~84のかつて「境界線精神遅滞」と定義されていた人たちは依然存在するのであり、この世界では「生きづらい」人たちだということなのです。

しかも彼らは、子どもの頃から生きづらさを持っていたにもかかわらず、ほとんど気づかれることはなく支援につなげてもらえることも少ないため、仕事が続かなかったり、引きこもったり、最悪な場合には犯罪に手を染めて刑務所に入ってしまう場合もあるのです。

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