「7人に1人」グレーゾーンの人が苦しい根本原因 身近な子どもが「非行少年」に変わる瞬間

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もちろん刑務所はあくまで最悪なケースです。ここで知っていただきたいのは、彼らが生きづらく困っていても、自分から支援を求めることが難しいこと、そして、他人からは支援を求めているような様子にはなかなか見えづらく、サポートを得られにくいこと、それがいちばんの問題なのだということです。

子どもたちをさらに生きづらくしてしまう構造

知的障害はグレーゾーンも含めると、障害程度の低い順から境界知能(グレーゾーン)、軽度、中等度、重度、最重度といった区分がなされています。しかしここにも大きな誤解があります。

障害程度の軽い軽度知的障害やグレーゾーンは、中等度や重度の知的障害よりも支援をしなくてもいいというわけではありません。

むしろ逆に、軽度知的障害やグレーゾーンであれば健常人と見分けがつかず、当然のように放っておかれ、さらに軽度といった言葉から「支援もあまり必要でない」と誤解され、また本人も普通を装って支援を拒否したりするため、支援を受ける機会を逃してしまうのです。

しかし一方で、日常生活では社会から「やっかいな人たち」と攻撃されたり、搾取されたりと、さまざまな困難に直面しているのです。

そのため、生きづらい子どもは、大人になっても反社会的な行動に至ってしまう可能性もあります。ここにも、生きづらい子どもたちをさらに生きづらくしてしまう構造があるのです。

ここで、「境界知能」と「発達障害」の2つはどう違うのだろうか?という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。この知能の課題と発達障害は別の問題です。

『不器用な子どもがしあわせになる育て方 コグトレ』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

症状が似ているところがありますが、ここで紹介した「困っている子どもの特徴」(勉強が苦手、感情のコントロールが下手、対人関係が苦手、不注意など)は、知的障害の場合、当てはまることが多いです。知的障害では、全般的な認知機能の低下が認められるからです。

一方の発達障害では、認知機能にプラス要素やマイナス要素が混在しているイメージです(ただし、知的障害と発達障害は合併することもあるので、注意が必要です)。そのため、知的障害を支援できるプログラムは、基本的には発達障害にも応用が利くと考えます。

なお2020(令和2)年4月に発足した日本COG-TR学会では、そんな「生きづらい子ども」を支える包括的支援の1つのツールとして「コグトレ」の普及に尽力しています。「コグトレ」は、国内の多くの学校でも知られるようになってきました。これからさらに、「不器用な子どもたち」への周囲の理解や具体的な支援が進んでいくことを望みます。

宮口 幸治 医学博士、立命館大学教授

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みやぐち こうじ / Koji Miyaguchi

京都大学工学部を卒業し建設コンサルタント会社に勤務後、神戸大学医学部を卒業。児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務、2016年より現職。困っている子どもたちの支援を行う「日本COG-TR学会」を主宰。医学博士。主な著書に『ケーキの切れない非行少年たち』『どうしても頑張れない人たち』『ドキュメント小説 ケーキの切れない非行少年たちのカルテ』(いずれも新潮社)、『境界知能とグレーゾーンの子どもたち』(扶桑社)、『境界知能の子どもたち』(SB新書)など。

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