テレビ報道の現場を覆う「身分制社会」の不条理

ニュース番組の「エース」でさえもこの扱い

Aさんのように「番組契約」あるいは「番契」と呼ばれる立場で、番組ごとに仕事を請け負う形となるフリーのDは、非常に立場が弱いのが一般的だ。仮に大手の番組制作会社の仕事であっても、報酬は非常に安い。

番組制作会社も、正社員だけでは人手が足りない場合も多いし、もし足りたとしても正社員だけで番組を作ると人件費が高くなってしまう。「番契」のDを使うことで人件費を抑制して、利益を上げている構図があるのだ。

とくに放送局系列の制作会社では正社員の給与が高いので、この構図が顕著だといえる。しかも、「番契」の人間は容赦なく首を切られるし、仕事面でもつらい目に遭わされることが多いという。40代後半のBさんの証言だ。

「危険でつらい密着取材ネタは、制作会社の社員Dではなく、いつもフリーの僕らに振られます。チーフのプレビューでも、社員は怒られないのに、僕は少しミスをするとすぐに怒鳴られる。僕は同時にいろんな番組の仕事を掛け持ちしてやっているのに、嫌がらせのように何回も編集をやり直させられます。

1ネタやるのに取材と編集で半月以上徹夜に近い状態が続きますが、1本のギャラは50歳近い私でも20万ですね。少しも上がりませんし、嫌になります。周りのDはほとんど業界を離れて、田舎で家業を継いだりしていますよ」

スクープをとっても給料は上がらず

フリーのDのみならず、中小の制作会社の正社員Dも、置かれている立場は非常に不安定だ。そして、冒頭にも書いたように、ドキュメンタリーやニュースを制作するノンフィクション系の番組制作会社には、企業規模も小さく財務的にも弱い会社が多い。

そんな会社の正社員で、民放キー局のニュース番組に長年派遣され「エース」として働くCさん(40代半ば)はこう話す。

「つい最近も、海外の戦場取材などで定評のあるドキュメンタリー制作会社が経営破綻しました。非常に実績ある会社だったので、自分ごとのように残念でした。

私の会社も経営状態は随分前からかなり苦しいようです。給料日は毎月10日なのですが、毎月のように経理から電話がかかってきて『給料さあ、15日でいい?』と聞かれます。『家賃の支払いがあるのでダメです』と答えると、『じゃあ、半額でいい?』と聞かれたりします(苦笑)」

Cさんは、月収が30万円を超えたのは30代後半のこと。これまでに一度もボーナスなどというものはもらったことがなく、40代半ばの今でも月収40万円に届くか届かないかくらい。しかし、こんなショッキングな体験をしたことがあるという。

「同じニュース番組の局員の女の子で、かわいがっている子がいて、いつも親身に仕事を教えたり相談に乗ってあげたりしていたのですが、その子が20代なのに年収1000万を軽く超えているのを知ったときは悲しかったです。ちなみに妻も局の系列の制作会社にいたので、私より給料も高くて、ボーナスもありました。

私は報道番組で『エース』と呼ばれて、スクープネタも取ったりすることもありますが、反省会で『よくやった』と局のプロデューサーに褒められるだけで、もう10年近くほとんど給料は上がっていません。別にお金のために働いているわけじゃないけれど……たまにむなしくなります」

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