テレビ報道の現場を覆う「身分制社会」の不条理 ニュース番組の「エース」でさえもこの扱い

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筆者は1990年代半ばから25年近くにわたってノンフィクション系の番組制作に携わってきているが、民放各局のニュース・ドキュメンタリー番組の制作現場は、番組制作会社やフリーランスのテレビマンたちのおかげで成り立っているといっても過言ではない。

人員の数でいっても局員の比率はさほど高くないし、ましてや仕事の経験値的には、優秀な外部のスタッフ抜きでは番組を制作するのは不可能だと思う。

「エース」が局員ストの尻ぬぐい

そんな彼らが、局員に比べて異常に安い報酬で「やりがい詐欺」のような形で働かされている現状が、改善される兆しはまったくない。Cさんはこう語る。

「たまに局員たちがストライキをすることがあります。組合の指揮の下、ニュース番組の局員スタッフが現場からいなくなるのです。そうしたストの日でもニュースはなくならないので、結局われわれ外部の人間が、局員のいない分の穴を埋めてたくさん働かなければならなくなります。

あれが昔から私はどうにも納得がいきません。私たちよりはるかにいい給料で働いている局員たちの待遇改善のストライキで、なぜ私たちが彼らの尻拭いをしなければならないのですか? どう考えても、あれは謎の習慣です。

よく局の労組の人が『君たちの待遇改善も要求項目に入ってるから』と言うのですが、いつわれわれの待遇が改善されたというんですか?『君たち制作会社の人間の立場もわかる』とか言う局員が、私はいちばん信用できません」

そして今、彼ら「ニュース・ドキュメンタリー番組を支える職人たち」を苦しめているのは、待遇の悪さだけではない。むしろ、このままではニュース特集やドキュメンタリー番組を制作し続けられなくなるのではないかと職人たちが憂いているのは、その制作環境の急速な悪化だ。

いったい今、何が起きているのか。後編で詳しくお伝えしたい。

本連載「テレビのミカタ」では、匿名であなたの置かれている現状を語ってくれるテレビ関係者からの情報・相談を募集しています(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
鎮目 博道 テレビプロデューサー、顔ハメパネル愛好家、江戸川大学非常勤講師

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しずめ ひろみち / Hiromichi Shizume

1992年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなど海外取材を多く手がける。またAbemaTVの立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、多メディアで活動。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルのメディアとしての可能性をライフワークとして研究する。近著に『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社・2月22日発売)

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