時代が安定している場合にはストック型の「アリの思考」が有利である。ところが逆にストック型の思考は変化に弱い。変化の激しい時代、せっかくの貯め込んだ金融資産が一瞬にして「紙くず同様」になってしまうのと同様に、知的資産もすぐに役に立たなくなってしまう可能性があるからである。
環境変化が速い世界においては「知的資産の負債化」は不可避である。ある時代、領域の専門家は次の世代に行くときには逆に重荷になってしまう。あたかも「荷物が多い人」のほうが引っ越しが大変で「腰が重く」なってしまう構図と同じである。このようにして、「アリ型思考」の人は変化に抵抗を示す。それはまさに「ストック型思考」であるがゆえのことである。
その点、フロー型のキリギリスは身軽である。変化に対しても「持たざる者の強み」を活かして柔軟に対応できるのである。
「知っていること」ではなく「知らないこと」に着目する
それでは具体的にはアリとキリギリスで、この思考回路の違いがどのような発想の違いとなって現れてくるのだろうか?
思考回路という観点で言うと、ストック型は、つねに過去の知識や経験に依存した考え方で、フロー型は、必要な知識や情報はその場で仕入れて新しい知識を生み出していくという考え方であった。
アリは「持てる者の発想」として、あくまでも「今あるもの」から発想する。「今ある知識や経験」を重視し、つねに「前年実績」や「競合他社事例」を意識し、何事も「積み上げていくこと」が美徳であるから、つねに今までの延長で物事を考える。
したがって、いわゆる「過去の成功体験から抜けられない」というのもアリ型の発想の弊害のひとつである。また知識以外でもアリはつねに「今あるもの」から発想する。今の自分の組織や今の業界のルールや常識、あるいは社会規範はつねに「ありき」で考えるのである。これらがアリにとっての「枠」となる。
知識とは基本的には「過去の集大成」と言える。時代が過去の延長で考えられるときには、これをストックとして考えて「そのまま使う」ことが重要だが、変化が激しい時代には、過去の知識をいかに未来に向けて応用できるか?に重点が移ってくる。
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