在庫ゼロ通販「SUZURI」が拓く巣ごもり新消費 吉本興業も活用、デザイン画だけで「2分で出品」

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GMOペパボ・SUZURI事業部の安宅啓部長は、同社内で別のECサービスを担当する中でスズリのアイデアを膨らませたという。「出品者にヒアリングする中で、商品の仕入れや製造、在庫管理がネックになって事業拡大できずにいるという話を多く聞いた。ここをプラットフォーム側で解決できればと考えた」。

こうして2014年に事業を開始したスズリだが、大々的な宣伝をすることもなかったためサービス自体の認知が上がらず、しばらくは鳴かず飛ばずの状態が続いた。潮目が変わり始めたのは2018年ごろ。ツイッターやインスタグラムで作品を投稿するイラストレーターやデザイナーが増え、スズリに目を付けた。彼らが「自分のイラストで商品を作ってみました」と宣伝することでフォロワーが買う、という流れができ始めたのだ。

ここから、ごく小規模でもECを始められるスズリの便利さが口コミで広がり、スズリに出品するクリエーターの数は2020年8月で累計34万まで拡大している。

吉本もオフィシャルショップを開設

スズリの活用は多数のフォロワーを抱えるようなクリエーター以外にも広がっている。例えば、起業家が自社の会社ロゴをあしらったノベルティーグッズを販売するパターンや、わが子の描いた絵をTシャツにして家族や親戚で購入するパターンなどがある。「コロナ禍で自宅時間が増えたことで、自分も何か作ってみようと始める人が増えた印象だ」(安宅氏)。

さらにコロナ禍で増えているのが、これまでリアルイベントやライブ活動などを行ってきたアーティストによる活用だ。イベントグッズは従来、イベント当日に会場で販売するケースがほとんどだったが、感染者数の推移によって開催可否や客入りが大きく左右されてしまう今、スズリの仕組みが重宝されている。

吉本興業がスズリ内に開設した「よしもと芸人オフィシャルショップ」で売られているグッズ(画像:GMOペパボ)

大手の芸能事務所も前のめりだ。吉本興業は8月、スズリ内に「よしもと芸人オフィシャルショップ」を開設。第1弾として、アインシュタイン、EXIT、霜降り明星、ミキなど所属芸人のグッズを販売している。

「在庫リスクがないので、劇場での通常のグッズ販売と違いさまざまな種類の商品を販売できる。イラストのテイストを変えるなど新しい試みもできた。想定の3倍の勢いで売れている」(吉本興業の担当者)。大規模な商品製造に取りかかる前のテストマーケティングとしても役立ちそうだ。

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