在庫ゼロ通販「SUZURI」が拓く巣ごもり新消費 吉本興業も活用、デザイン画だけで「2分で出品」

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一気に注目度を増すスズリだが、今後成長を加速するためには課題もある。1つは、商品の注文から到着までにかかるリードタイムだ。スズリで販売している商品の中には、8月時点の注文で発送予定日が10月と表示されるものもあった。スズリは複数の提携工場に商品製造を委託しているが、アイテムによっては印刷に高度な技術を要するために限られた提携先でしか製造できない場合もある。

日用品のように「明日なければ困る」という類いの買い物ではないものの、買い手からすれば到着が早いに越したことはない。「一点から商品を作ってくれる工場はそもそも数が少ないが、地道に開拓してきた。提携先にはすでに非常に頑張ってもらっているが、今後も協力関係を深め、物量を増やしてもらえるようお願いすると同時に、新しい提携先も増やしたい」(安宅氏)。

著作権侵害の不安はないか

もう1つ注意したいのが、著作権侵害だ。スズリでは出品者自身が著作権を有するデザイン以外の出品を禁じている。利用者向けのQ&Aでも「ミッキーマウスのTシャツ作っていいですか?」という質問に対し「絶っっっっっっっっっっっ対やめてください。利用規約に基づき、即削除させていただきます」(原文ママ)と回答している。

事業部長の安宅氏は社内の別のECサービスを担当する中で出品者の悩みに触れ、スズリのサービスを構想し始めた(画像:GMOペパボ)

出品者自身による権利侵害有無のチェックを促すほか、社内で目視による画像チェックも実施。 具体的には 、通報ベースでの目視による確認 、受注後の目視による確認などだ。権利侵害の商品の登録に気づけなかった場合、受注後の製造前に社内の基準による目視確認で食い止めるという考え方である。この仕組みがあることで、今のところ大きなトラブルに発展した例はないというが、出品者が増える中では、チェック体制の強化を継続的に行っていく必要があるだろう。

取扱高をもう一段伸ばすための課題は、購入の習慣化という点にもある。「現在は知名度のある作り手がファンを連れてくる形での購入が大部分を占める。今後はスズリ自体に『ここに来れば面白いものがある』という魅力を感じてもらえるようにサービスを進化させたい」(安宅氏)。

スズリはウェブサイトのほかにスマホアプリも展開しており、利用者ごとに最適化した商品レコメンドなども追求している。コロナ禍の巣ごもり需要に終わらず、成長に弾みをつけられるか。これからが勝負どころだ。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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