第2回 3分野の惨状 日本の弱い分野はどこか

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化学、材料化学分野の研究レベルは高い

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参考資料1

参考資料1の工学系分野を見ると、化学分野は世界の上位100機関の中に10の日本の機関が入っていて、そのうち7機関が上位30位までに入っていることがわかります(大学では「化学専攻」は理学部に入っていますが、ここでは「応用化学」や「高分子化学」など工学部で扱う内容も化学分野に分類されていますので、化学を工学系分野に入れています)。

 また、材料科学分野も世界の上位100位に9つの日本の機関が入っていて、そのうち7つの研究機関が上位29位までに入っています。ここから、化学、材料科学のどちらの分野も、我が国の研究レベルが国際的に高い位置にあることがわかります。

 こうした知識は、産業界の強さにも反映されているように思えます。化学や材料科学の知識が製品開発に直結している高品質素材、高機能材料などの分野では、我が国企業の国際競争力は非常に高く、例えば電子材料では多くの製品分野で日本企業のシェアが90%を超えていることが知られています。

 これに対し、コンピュータ科学分野では100位に入るのは2研究機関だけとなっていて、化学や材料科学ほどの研究力はないように見えます。産業界を見ても、コンピュータのソフトウェア、システム構築などの分野では、日本企業は必ずしも世界のトップを制するほどの競争力を有しているわけではありません。これらのことから、ここに示された研究機関ランキングは、産業競争力と関係を持っているように思えます。

 それはある意味当然と言えば当然です。なぜなら、技術において世界有数の産業競争力を持つ分野では、次世代製品を開発するために常に新しい科学的・技術的知識が求められるからです。そうした分野の企業は、最先端の研究成果を産業化する競争を行っている、と言っても過言ではありません。となれば、当然研究のレベルもアクティビティも上がるはずです。

 化学、材料科学の両方の分野で、産業界を支援することを目的とした組織である産業技術総合研究所がそれぞれ13位、8位と上位に入っていることからも、このことは支持されるように見えます。

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