検索も広告も、まだまだ面白くなる
嶋:IDC Japanの調査によると、2012年に世界で3Dプリンタが出荷された台数は6万8000台。これが2017年には30万台を突破すると予想されていますね。家庭への普及が始まれば、「さわれる検索」の利用方法も広がるはずですよね。
内田:そうです。先ほど嶋さんにご指摘いただいたように、「さわれる検索」で立体物を使った広告表現も可能になるかもしれません。
広告って言い方悪いですが、届け方によっては嫌われ者になってしまう。私たちは、消費者の欲しいものと、クライアントをつなぐ“マッチング”こそヤフーの使命だと思っています。たとえば、「さわれる検索」と3Dプリンタを使えば、新しいスマートフォンやクルマのデザインを立体で出力することができるようになるかもしれないので、商品の購入を決める際に有力な判断材料を提供することができるかもしれません。
嶋:写真で見せるのもありだけど、立体で見せることができたら、すごくいいプロモーションが企画できそうです。
内田:ほかにも、壊れたドアの部品をデジタルカメラで撮影し、3D検索して部品を出力することも可能になるかもしれません。消費者が欲している情報なら、それは「広告」ではなく「コンテンツ」になる。そういう広告を目指したいです。
嶋:最近ではSNSで情報を得る人たちが増えてきた。検索の重要度がちょっと低下しているイメージもあったんですが、今回の施策は「まだまだ検索で面白いことができる」という検索の将来性を見せてもらった気がしています。
荒波:最近では東日本大震災が起きた3月11日に、Yahoo! JAPAN トップページで「3.11」と検索すると1人につき10円をヤフーが寄付する施策を実施しました。当初は50万人の参加を予想していましたが、実際には約256万人が参加。普段から行っている「検索」という行為とドネーションが結び付くことにより、ここまで大きな動きに発展したわけです。「検索」の可能性はまだまだ広がると思っています。
嶋:ヤフーは地図や路線案内、オークションなどいろいろなサービスを提供しています。それらをひもづけるコア機能が検索だとすると、検索が活性化することでさまざまなサービスにも刺激を与えることができそうですね。
組織を横断して心を動かす「アート」力
嶋:ところで、「さわれる検索」プロジェクトの目標はどのように設定されたのですか?
荒波:まずは、何か新しいことにトライしようという思いが強かった。
嶋:この企画を起爆剤にして、「ユーザーをドキドキ、ワクワクさせるにはどうすればいいのか?」を社員みんなで考える雰囲気を作りたかったということですか?
内田:はい。さらに、対外的にも新しいヤフーを印象づけることも目標でした。個人的にはこのプロジェクトのKPI(業務評価指数)は「期待感」だと思っています。2012年に社長が代わり、「爆速」というスローガンを掲げました。このフレーズは注目を集めましたよね。僕自身も電通からヤフーに転職するとき、「ヤフーは今までにない会社に生まれ変わろうとしているな」という期待感がありました。そういう雰囲気を市場にどう醸成していけるかが、今回のプロジェクトでも重要でした。
具体的にどのようなところを意識したかというと、ひとつはソーシャルグッドを意識して、BtoCでの期待感を高めること。さらに、事業の新規性によりBtoBでも期待感を高めたかった。実際に「さわれる検索」が「アドフェスト2014(アジア太平洋広告祭)」のメディア部門で銀賞を獲得したことで、協力企業にとても喜んでもらえましたし。
荒波:そもそも広告をアートとしてとらえて賞を獲るなんて、これまでヤフーでは発想しないことでした。それが、今回、ありがたいことに受賞させていただくことができました。さらに言えば、こういうことって、続けていくのがとにかく大切なのです。1回で終わるのではなく、会社の中のコミュニケーションやクリエーティブについて真剣に考える人材を増やしていかなければならないと思います。
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