嶋:実際、社員の皆さんの意識は変わり始めていますか?
内田:「こういう面白いことができないか?」という姿勢で仕事に臨む社員が増えた気がします。クライアントさんに提案に行くと、「ヤフーと媒体以外の話ができるなんてびっくりした」と言われます。
嶋:「さわれる検索」では、企業から3Dデータをもらうなど、クライアントさんとの調整も多かったと思います。つまりヤフー社内で営業部門も巻き込んでいったわけですが、部署間の連携はスムーズにいきましたか?
内田:はい、営業などほかの部署にはかなりカジュアルに相談しにいっています。
荒波:「さわれる検索」はアイデア自体が面白く、かつ世の中のためになる企画でしたから、メンバーを募るのに苦労した記憶はまったくありませんね。
内田:逆に人が集まってきたくらいです。
嶋:単純で、よいアイデアを提示していくことが、人を巻き込む秘訣ってことですね。
内田:皆がアイデアを好きになってくれて、「それならうちの部署はこういうことができるよ」って声をかけてくれましたね。スケジュールの関係で実装までに至らなかった提案も、多数、社内から受けました。世の中で話題になってる広告って、やっぱりまだまだテレビの広告がほとんど。ネットの広告が国民的話題になることはあまりありません。しかし、クライアントの課題に対して、面白い提案をネットから広げていけるという意識が組織に芽生えてきたと感じます。
嶋:まさに“アート”的な発想が身に付いてきたと。ユーザーだけでなく、まずは社内の心を動かす。それが縦割りを打破するポイントですね。
荒波:もちろん広告の営業サイドと、メディアの編集サイドで折り合いがつかずに結論が出るまで時間がかかることもある。しかし、今回の企画でいうと、やはりアイデアが秀逸だったことが大きい。“アート”的な発想がヤフーの可能性を広げていくんだと社員が実感した。そういう企画をこれを機にどんどん増やしていきたいですね。
「爆速」「10倍」が現場に浸透するワケ
嶋:ヤフーは宮坂学社長が就任して以来、「爆速」をキーワードに多くのサービスをリリースしてきました。そして、今年2014年は「10倍」(×10)という言葉を掲げてらっしゃる。これらのメッセージは働く現場に浸透している?
内田:社員もそうですが、役員がすごくアグレッシブで「ここは大きな会社なのか?」と電通から転職してきたときに感じました。とにかく経営の判断が速く機動力がある。そういう役員がいるからこそ、現場も「爆速」で動けるのだと思います。僕が思うにヤフーは「日本でいちばん大きいベンチャー企業」と表現できるかもしれません。
荒波:「10倍」とは「サービスを10倍速く、10倍使いやすく、10倍大きく」ということ。大きな目標ですが、意識を変えるためには繰り返し言い続けることが大切です。さらに、具体的に評価システムにもこうしたスローガンを反映させています。たとえば、「仕事を速くやったかどうか」が人事評価の一部に反映される。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら