ヤフーの“右脳”が開発した、「さわれる検索」

「クジラ」と言えば本当に“クジラ”が出てくる!

盲学校で人気だった意外なモノは? 

縮小された立体のゾウを触ることで初めてゾウの形を理解することができた

:「さわれる検索」は検索機にたとえば「ゾウ」と言葉で入力すると、ゾウの3Dデータにアクセスし、立体物を出力してくれる仕組みです。とても刺激的で、ワクワクするアイデアだと思いました。まずは、プロジェクトを立ち上げた経緯を教えてください。

荒波:広告を統括する立場に僕はいるわけですが、インターネットの広告は“テクノロジー”にばかりスポットライトが当たって、“アート”や“クリエーティブ”の領域に関して議論が十分にできていなかったのではないかと思うんです。これまでのインターネット広告はターゲッティングなどのテクノロジーの部分を重視しすぎて、驚きを人に与えて人をエモーショナルにする、そういうアート的な要素が欠けていたのです。広告を見たユーザーに何らかの行動を起こしてもらうためには、テクノロジーだけでは不十分。そこで、われわれは「アート&テクノロジー」というスローガンを掲げて広告の未来に挑戦しようとしています。そんな中から出てきた企画のひとつが「さわれる検索」だったのです。

内田:今までは検索結果を見たり、聞いたりしかできなかったのが、立体物として“触れる”ようになれば誰もが驚きますよね。そこがアート的な部分です。

:検索という行為に対して、今までにない非連続なアプローチですよね。そこがかっこいい。また、この活動は盲学校に検索機を設置するなど、ソーシャルな取り組みでもありました。検索が広告の新しい可能性を提示しつつ、社会貢献にもなっているわけですね。

内田:ありがとうございます。盲学校の児童には、授業やニュースなどで名前は聞くけど、実際にどんなモノかわからないモノがたくさんあります。

:どんなモノが検索されましたか?

内田:蜂やサソリなど危険で触ることのできないモノが人気でした。さらに自由の女神やスカイツリーなど大きくて全体を触ることができないモノもよく検索されました。龍など架空の生物も実際には触れないので児童たちは興味津々。

:確かに、ニュースでスカイツリーって言葉だけ聞いてもどんな形かわからないから、気になるはずですね。出力にはどれくらい時間が?

内田:大きめの立体物だと完成まで1時間ほどかかるので、授業が始まる前に検索をかけて完成を待つ生徒が多かったようです。

:この「さわれる検索」ですが、企業も巻き込んだ展開になっているそうですね。

荒波:はい。日産自動車さんなどの企業にも3Dデータを提供していただきました。実際に日産のセレナに乗っている児童が、セレナの3Dを出力して、「自分が乗っているクルマはこんな形なんだ」って喜んでいましたね。立体物に触っている児童たちを見るのは本当にうれしかった。

内田:ほかにもヘーベルハウスの旭化成ホームズさんから “家”の3Dデータを提供してもらいました。多くの企業に協力いただいたのです。最終的には242個の3Dデータが出力可能になりました。

:確かに、立体物として出力できたら家の間取りがイメージしやすいですものね。それは、何だか広告のツールとしても使えそうな気がしてきましたね。

荒波:そうですね。海外メディアで取り上げられたおかげで、国外からもたくさんのデータ提供があったんです。インドの眼科医さんが、目の見えない方が楽しめるパズルを投稿してくれたり。

:誰にでも3Dデータを提供できるプラットフォームになっているところもいいですね。

内田:そうなのです。集まったデータは海外の3Dデータ共有サイト「Thingiverse」で公開しましたした。また、アプリケーションをオープンソース化して、世界中の人が「さわれる検索」を体験できるようにしました。触れる検索マシンは筑波大学に寄贈され、そこから他校にも貸し出される予定です。

次ページ検索も広告も、まだまだ面白くなる
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