偽情報にまんまと操られる人が大量発生する訳 ソーシャルメディア上に広がる禍々しい情報戦
繰り返しになるが、ソーシャルメディアが事実上の社会インフラになった現在、フェイクニュースよりも格段に複雑で巧妙な情報戦が展開されるようになっている。この本を読めばわかるのだが、「ファクトチェック対フェイクニュース」という構図はすでに古い。
攻撃側は最先端の心理学や社会学、人類学で武装して利用者のアイデンティティーを操作し、社会に分断を引き起こした。実際、CAは超一流の心理学者を動員して心理戦版大量破壊兵器を開発したのだ。第2次大戦中にアメリカが超一流の物理学者を動員して原子爆弾の開発に取り組んだように。この本はワイリー氏の懺悔(ざんげ)の記録でもある。
日本は無防備、のんきでいられない
その意味では日本は心もとない。一部の大学では今も心理学科が文学部に置かれている状況が象徴しているように、社会科学分野で出遅れており無防備だ。高度な情報戦を仕掛けられたらひとたまりもない。ファクトチェックを進化させたり、新たなルールを設けたりして、社会インフラとしてのソーシャルメディアの安全性を高めなければならない。
ワイリー氏は本の中で「CA事件が二度と起きないようにするためには、CAを生み出した環境そのものを正さなければならない」と指摘。つまり、現状を放置したままではCA事件は繰り返されると警告しているのだ。具体策としては「インターネット版建築基準法」の制定や「ソフトウェアエンジニアの倫理規範」の導入などを唱えている。
日本は情報戦とは縁がないなどとのんきに構えていてはいけない。例えば、中国はいわゆる「戦狼(ウルフウォリアー)外交」と称して、世界各地で攻撃的なプロパガンダを展開中だ。自国内で禁止されているフェイスブックやツイッターも含めて、ソーシャルメディアを積極活用している。「第二のCA」と組んだらどうなるだろうか……。
現状ではソーシャルメディアは悪用されやすい。ソーシャルメディアを利用していると、悪意ある第三者によって知らぬ間に自分のアイデンティティーが操られていてもおかしくないということだ。誰もが「マインドハッキング」のリスクにさらされているのだ。
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