偽情報にまんまと操られる人が大量発生する訳 ソーシャルメディア上に広がる禍々しい情報戦

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心理戦版大量破壊兵器の主要ツールがマイクロターゲティングだ。アルゴリズムに従って有権者をカテゴリー化し、特別にカスタマイズしたメッセージを届けるのだ。結果としてアメリカでは「MAGA!(アメリカを再び偉大に!)」や「壁を建設しろ!」といった叫び声がこだまし、社会の分断と対立が深まった。

ネブラスカ州の市民の個人情報が丸見え

ワイリー氏はこの本の中で「リベラル派の同性愛者で24歳のカナダ人が、どのようにしてCAに加わり、オルタナ右翼向けに心理戦用兵器を開発する羽目になったのか」について詳述している。当事者が自らの体験を振り返っているだけに、真に迫る内容であり読み応えがある。

CAがフェイスブックデータを使い、ロンドン本社内の役員室で実験する様子は生々しい。例えば、発表者がリクエストに応えて、同じ名前のネブラスカ州の市民の一覧をスクリーン上に映し出す。顔写真、勤務先、子どもの学校、自家用車、投票行動、好きなミュージシャン――。どの名前をクリックしてもあらゆる個人情報が即座に出てくる。

もっと驚きなのは、CA幹部がスクリーン上に表示されているネブラスカ市民に直接電話をかけ、個人情報が正しいかどうか確認する場面だ。もちろん、キッチンで電話を取って話をしているネブラスカ市民は、ロンドンとつながって監視されているとはつゆほども思っていない。

CAは英米だけで活動していたわけではない。アフリカ諸国など発展途上国では監視の目が緩いのをいいことにやりたい放題であり、想像を絶するプロジェクトも手掛けていた。

例えばナイジェリアの大統領選挙への介入だ。CAは現職大統領の再選を支援する一環として、対立候補の支持基盤破壊に走った。最もおぞましかったのは、対立候補の支持者をターゲットにしたCA制作ビデオ広告だ。対立候補が勝った場合に訪れる未来の姿として、本物の拷問と虐殺シーンを使ったビデオを作り、恐怖心を煽ったのだ。

秘密裏に個人データが大規模に収集され、その実態を内部告発者が暴いたという点では、CA事件は2013年のスノーデン事件と同じだ。しかし、世界を揺るがせたブレグジットとトランプ政権誕生に決定的影響を与えたのだとすれば、衝撃度ではスノーデン事件を上回っているといえよう。

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