偽情報にまんまと操られる人が大量発生する訳 ソーシャルメディア上に広がる禍々しい情報戦
しかも、CAによって高度化した情報戦はブレグジットとトランプ政権誕生で終わったわけではない。むしろ、ますます先鋭化している。
今年に入って舞台は米中に移り、両国間の情報戦が激化の一途をたどっているのだ。象徴的なのが中国発アプリとして初めて世界を席巻した「TikTok(ティックトック)」だ。若者の間でブームになっている動画共有アプリだというのに、フェイスブックと同じソーシャルメディアであることから脅威論が広がり、アメリカでやり玉に挙げられている。
7月末には米共和党の有力上院議員グループが書簡をまとめ、トランプ政権に対して強い対応を求めた。ティックトックは中国共産党の影響を排除できず、数カ月後の大統領選挙に介入する可能性がある、と警戒していたのだ。ティックトックが心理戦版大量破壊兵器になるのを懸念していたともいえる。
個人データはどう入手するのか。CAはフェイスブックのユーザー情報管理がいい加減なのにつけ込んで、不正な手段を使って膨大な個人データを入手した。中国の場合には国家情報法がある。中国共産党は同法を根拠にティックトックに命じれば、合法的にユーザー情報を入手できる(ティックトックは情報提供を否定している)。
だからこそトランプ政権は9月15日を期限にティックトックの閉鎖か売却を求めたのだ。結局、ティックトックはアメリカのマイクロソフトによる買収を拒否し、同じくアメリカのオラクルとの提携を選んだ。これからアメリカ当局による審査を受けることになる。
TikTokユーザーの一部でも投票態度を変えれば
ティックトックはダンス動画など若者向け動画共有アプリだから、選挙介入とは関連付けにくいのは確かだ。しかし、アメリカ人ならば18歳以上であれば選挙権を持っている。立派な有権者であり、マイクロターゲティングの対象になる。
ティックトックの月間ユーザー数はアメリカでも急増しており、8月についに1億人の大台を突破。このうちの一部でも外部からの影響で投票態度を変えれば、選挙結果に決定的影響を及ぼす。2016年の大統領選挙では、トランプ氏は激戦3州(ミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシン)をわずか合計8万票差で制しているのだ。
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